屋根裏ネコのゆううつ III

屋根裏ネコのゆううつ III

(just like) starting over

何事もなく数週間が過ぎて、11月の半ばになってた。寒さに目を覚まして、珍しく早起きをした火曜日の朝。この秋初めて、制服の上にウインドブレーカーを羽織って、早めに学校へ行こうと家を出た。マンガの吹き出し...
屋根裏ネコのゆううつ III

(just like) starting over ii

昼休み、ルナが後ろで、すっと席を立つ気配がして、僕も振り返りながら立ち上がる。ランドセルを両手で抱えたルナが小さくうなずいて、無言で教室を出て行くので、僕も黙って後について廊下へ出た。あえてこちらから...
屋根裏ネコのゆううつ III

(just like) starting over iii

砂嵐の夢を見た。ざあざあと耳障りな雑音が鳴り続け、視界は全て、モノクロの砂嵐。まるで放送を受信できないテレビ画面のよう。一面に白黒の点々が小さな虫の集団のように、右へ左へ上へ下へ、不規則にうごめいてる...
屋根裏ネコのゆううつ III

(just like) starting over iv

ハナの「灰の海」の底、黒い床が薄っすらと水の膜に覆われた、記憶の保管庫。周囲を螺旋状に取り囲む、白い梯子状の構造物の名前を、僕は知らない。だから、最近は勝手に「記憶の梯子」と呼んでた。そもそも「オレン...
屋根裏ネコのゆううつ III

(just like) starting over v

金曜日は、晴れていたけれど風の強い寒い日だった。制服の上にウィンドブレーカーを着て、前のチャックを襟元までしっかり閉めてもまだ寒い。いつもなら用意周到な母が、寒くなりそうな日は朝から準備を怠らないのだ...
屋根裏ネコのゆううつ III

(just like) starting over vi

土曜日も良く晴れた寒い日だった。ぴゅうと甲高い音を立てて、冷たい北風が僕の部屋の窓に吹き付ける。ガラガラと大きなエンジン音が聞こえて、窓から下をのぞいたら、家の前に大きなクレーン付きのトラックが停まっ...
屋根裏ネコのゆううつ III

livin’on the edge

真っ先に奥の部屋から駆け出したのは、ルナだった。慣れた動きでスルスルと机や器具の間をすり抜けて、ショートカットでまっすぐに部屋の入り口のドアへたどり着くと、「おーい、おっちゃーん、起きてー」ぺちぺちと...
屋根裏ネコのゆううつ III

livin’on the edge ii

土曜日の夜、昼間にも増して、冷たい木枯らしがぴゅうぴゅうと吹きつけて、部屋のアルミサッシがカタカタ揺れていた。屋根裏をのぞいてみたけれど、Nの姿は見えない。この寒いのに、日課の夜の散歩は休まないんだ、...
屋根裏ネコのゆううつ III

livin’on the edge iii

日曜日は、雨が降ったり止んだりの不安定な天気だった。どこにも出かける用事はないから、僕はまあ良かったけれど。母は、朝から庭に干してた洗濯物を昼前に慌てて取り込みながら、何やらブツクサ云ってるのが、2階...
屋根裏ネコのゆううつ III

livin’on the edge iv

御子の去った記憶の保管庫は、どこかでかすかに水の流れる音と静寂だけが満ちていた。その静けさを、いつも通り、どこかのどかな声が破る。「ねーキクタ、線が指してるのはどれー?開けてみてよー」ルナの声に、はっ...
屋根裏ネコのゆううつ III

livin’on the edge v

月曜日、いつもより早く教室へ着いて、ふと思う。早めに来るのが、すっかり習慣になってしまったかもしれない。すでに何人か来ていたクラスメイトに「おはよう」と声をかけて、席に着いて、思い出す。「うちゅうのひ...
屋根裏ネコのゆううつ III

livin’on the edge vi

何事もなく日々は過ぎて、金曜日は良く晴れた穏やかな秋の日だった。そろそろ11月も下旬なので、寒さはそれなりだけれど、日なたはぽかぽかと暖かいくらい。のどかな秋の終わりの青い空。なのに、何かがおかしい気...
屋根裏ネコのゆううつ III

don’t let me down

土曜日も良く晴れた寒い日だった。日なたはぽかぽかと暖かかったけれど、風が強くて、耳元でぴゅうと鳴ると、寒さに身がすくむ。午後2時過ぎに家を出て、Jと待ち合わせをしてる公園へ向かう。ハンスとの約束は午後...
屋根裏ネコのゆううつ III

don’t let me down ii

ビッグブリッジを渡る救急車の後部席の窓から、リバーフロントビルを振り返る。傾きかけた西日を浴びた貝殻のような渦巻き型のビルは、特に普段と変わりがないように見える。あのビルのいったいどの辺りにルリおばさ...
屋根裏ネコのゆううつ III

don’t let me down iii

受付の灯りも消えた待ち合いロビーは、ほとんどひとけもなく、しんと静まり返っていた。ルリおばさんの窓が閉じた「オレンジの海」も、今は静かな波音だけが繰り返し聞こえてる。そんなしばしの静寂を破るのは、いつ...
屋根裏ネコのゆううつ III

don’t let me down iv

仄暗いオレンジの夜空を、薄雲が流れて行く。ほのかに光る海のオレンジ色を映した空に、雲は白っぽい灰色に見える。星に海があり、そこには豊富な水があるのだから、空には雲もあるのだろう。かつてあった、と云うべ...
屋根裏ネコのゆううつ III

don’t let me down v

ぱちんと指を鳴らして、テラスのテーブルに3人の分のお茶を出す。「それで?」少し困ったような笑みを浮かべ、ルリおばさんが僕らをくるりと見渡して、「どうせあんた達、昨夜もあの後、会議してたんでしょ」軽いた...
屋根裏ネコのゆううつ III

don’t let me down vi

ガブリエルからハンスのメールアドレスと電話番号を教えてもらったものの、さてどうしたものかなと僕は少し、いやかなり迷ってた。日曜の間じゅう、スマホを見る度にずっと思い悩んで、結局メールも電話もできなかっ...
屋根裏ネコのゆううつ III

song for someone

Jが僕の肩にふわりと触れて、「じゃあ、今日のところは、おいとましようか」魔法の声で微笑む。そして僕が返事をするよりも早く、ハンスの方を向いて、「ハンスさん、どうもありがとう。キクヒコの事、よろしくお願...
屋根裏ネコのゆううつ III

song for someone ii

全員が息を飲んで、黙ったままルナのスマホを見つめてた。「お見事、チェックメイト、だね。いや、王手飛車取り、かな」ふわりと揺れた御子が、胸の前で手を叩くような仕草でうれしそうに云う。ふわふわの靄のような...
屋根裏ネコのゆううつ III

song for someone iii

ルナとハナをリバーフロントホテルのロビーまで送って、「海」では一旦解散をした。ハナは、今日ずっと電車ブランコに乗っていて、少しはしゃぎすぎたのかな。Lの腕にしがみついたまま眠ってしまってたので、ナナは...
屋根裏ネコのゆううつ III

song for someone iv

火曜日は、どんよりと重たい灰色の雲に覆われた、寒い日だった。今にも雪が降り出しそうな、体の芯まで凍えるような、そんな寒さ。もう11月も今日で終わり、明日には12月になるんだものね。昨日の明日を指定した...
屋根裏ネコのゆううつ III

song for someone v

金色の光が、ロリポリの大きな体を下から包み込むように照らし出していた。その巨体の影になって、普段なら見えないはずの体の下の暗い床が、金色に輝いて見える。内側から発せられる光で、まるでロリポリの巨体その...
屋根裏ネコのゆううつ III

country road

地下施設の夢を見た。最初、僕はそれがあの地下だとは気づかなかった。煌々と蛍光灯の明かりが灯る、窓のない広い通路。床も天井も白っぽいコンクリートボードで、左右の壁も同じ材質に見える。病院か工場か、何かの...
屋根裏ネコのゆううつ III

country road ii

水曜日、夜になっても、スマホには何の反応もなかった。気になって何度か(いや、何度も)おヒゲの先生のアイコンをタップしてみたけれど、画面には無機質な「オフラインです」というメッセージが表示されるだけ。た...
屋根裏ネコのゆううつ III

country road iii

ほのかに光るオレンジの海、白い星砂の波打ち際のコテージのテラスへ、僕らは戻ってた。しわしわになってしまったタロットカードを出来る限り手で伸ばして、テラスのテーブルに置く。ナナとルナは、テラスの入り口、...
屋根裏ネコのゆううつ III

country road iv

木曜日、寒さに目を覚ますと、カーテン越しの外がまだ暗い。早起きしすぎたかな、と時計を見たら、もう起きる時間で。震えながらベッドを抜け出して、カーテンを開けてみると部屋の窓が白く曇ってる。手で擦って曇り...
屋根裏ネコのゆううつ III

country road v

木曜日の昼休み、このまま本格的な冬に突入するのでは、と思うような勢いで振っていた雪は、けれどお昼前にはあっさりと止んで、雲間からは明るい日が差し込み始めてた。教室の窓からぼんやりと見下ろしたら、朝は真...
屋根裏ネコのゆううつ III

country road vi

放課後、帰りのホームルームが終わるなり、振り返ってルナをつかまえる。「ルナ、今から少し、付き合ってほしいところがあるんだけれど」云ったらルナは、ぴこんと片方の眉を上げて、ネコみたいな赤い眼で僕を数秒じ...
屋根裏ネコのゆううつ III

country road vii

しばらくの間、そうして無言のまま、僕らはハンスを、ハンスはロリポリを、ただじっと見つめていた。しんと静まり返った広いホールには、地下の冷たい冬の空気に混じって、どこかほのかにぬくもりを感じる金色の光の...
屋根裏ネコのゆううつ III

hat full of stars

「それで、どーすんの」照れ隠しなのかな、ふてくされたような顔で、ルナが僕に尋ねる。どーすんの今日、これからの予定かな。ひとまず、目的のエレベーターは確かめる事ができた。残念ながら動かなかったけれど、キ...
屋根裏ネコのゆううつ III

hat full of stars ii

金曜日も、朝から小雪の舞う寒い日だった。昨日ほど本格的な降りではないので、今日の雪は、積もるようなことはなさそうだけれど。ぴゅうぴゅうと寒々しい音を立てる北風に、舞い落ちる小さな雪片が右へ左へまるでダ...
屋根裏ネコのゆううつ III

hat full of stars iii

親分の教えは、正しかったのだと思う。非常停止装置が作動していて、エレベーターは止まり、扉もロックされていた。ロックを外し扉をこじ開けて、装置をリセットした事で、停止状態は解除された。けれど、おそらく電...
屋根裏ネコのゆううつ III

hat full of stars iv

傾いた西日が明るく照らすお庭に、僕はポツンと佇んでいた。足元はレンガの歩道で、道の脇にある1本の木が、満開の白い花を咲かせてる。時折吹く冷たい風に、白い花びらが飛ばされてひらひらと舞う。まるで夢の中み...
屋根裏ネコのゆううつ III

hat full of stars v

土曜日は、何事もなく過ぎて・・・、いや、何事もなくは、なかった、かな。朝からリビングでテレビを見ていた父に、「これ、拾ったんだけど。警察に届けたほうがいいよね」ブラウンの拳銃を見せながら尋ねたら、寝ぼ...
屋根裏ネコのゆううつ III

hat full of stars vi

不思議な夢を、見た。黒い雲が渦を巻き頭上に低く垂れ込めた、昼なのに薄暗い世界。まるで生命があるかのようにゆるゆると渦巻く黒雲からは、白い灰がはらはらと音もなく舞い落ちていた。これは、灰の海、かな?空模...
屋根裏ネコのゆううつ III

hat full of stars vii

月曜日は、雨だった。冷たいみぞれ混じりの冬の雨が、暗い灰色の雲からポツポツと落ちて来てた。朝のテレビの天気予報によると、どうやら終日降り続くらしい。せっかくの月曜日なのに、今日は公園へ行けないかな。傘...
屋根裏ネコのゆううつ III

hallelujah

途切れ途切れの夢を見た。眠れない真夜中に、あるいはふと目覚めた明け方に、うつらうつらしながら見る夢のかけらのように。ひどく断片的で、バラバラで、まとまりのないいくつかの夢。ある意味では、それはとても夢...
屋根裏ネコのゆううつ III

hallelujah ii

冷たい雨の中、傘を差して学校へ向かった。雨はポツポツとどこか遠慮がちに、それでも止む事なく降り続いていた。暗く曇った空と同じように、晴れない気分を抱えたまま、ぼんやりと一日を過ごす。そこはかとない寂し...
屋根裏ネコのゆううつ III

hallelujah iii

帰りのホームルームが終わり、上着を羽織ってランドセルを背負ってから、席に座ってドナドナモードになる。海を「振り返る」と、待っていたかのようにルリおばさんの声が、「状況に変わりなし、よ。先生のカメラにも...
屋根裏ネコのゆううつ III

hallelujah iv

玄関の鍵を開け、家に入る。家の中は薄暗く、父も母もまだ帰っていなかった。階段を駆け上がり、部屋に入るとランドセルを机の上に放り出してベッドに腰掛け、オレンジの海を「振り返る」テラスの端に立つ僕を、みん...
屋根裏ネコのゆううつ III

hallelujah v

水曜の夜。夕食を食べ終え、お風呂から上がって2階の部屋に戻ると、ふと視線を感じた。屋根裏へ上がる梯子を見上げたら、青と琥珀のきれいな眼が、暗闇の中から僕を見下ろしてる。N、何だかずいぶん久しぶりな気が...
屋根裏ネコのゆううつ III

hallelujah vi

木曜日も、雨だった。朝から霧のような冷たい雨が街を覆っていて、何だかそれだけで、どんよりと気分が沈んでしまう。もう少し気温が低ければ、雪になっていたのかもしれない。雪ならまだしもだけれど、こんな時に雨...
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