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屋根裏ネコのゆううつ

眼を開くと、セピア色の世界だった。
完全にモノクロというわけではなく、古い映画のような、色数が少ないフィルムで見る映像のような、淡いけれど深みのある風景。
この景色には、見覚えがある。
これは、Nの視界だ。
「おかえりなさい、キクタ。ずいぶん早いお戻りでしたね」
Nの意識体は僕の膝の上にちょこんと座っていて、僕を見上げてふふんと鼻を鳴らす。
ここは、オレンジの海。僕の意識空間だった。
あの東屋に、僕はいた。
テーブルがあったはずの真ん中辺りに、ガブリエルの部屋にあったのと同じ、操縦席のような椅子が置かれている。
そこに座る僕の眼の前、海側の一面には大きなNの視界の窓。
セピア色の夕焼け空が、その窓の向こうに見えた。
僕は、どれくらい眠っていたのかな。
ふむ、とNが鼻を鳴らして、視界がぐっと下向きに動いた。
Nの体は、僕の家の屋根の上にいるらしい。
上から見下ろす屋根の斜面と家の軒先、その向こうに家の前の大通りと歩道が見えた。
歩道にはくるくると回る赤いランプ。
救急車が停まっていて、後ろ側のハッチが開いている。
担架に乗せられた僕と、エプロン姿の母がそこから車内へ乗り込んだところのようだった。
母は、家に戻ってサンダルを履いて来たらしい。手には、いつも出掛ける時に持っている小さなバッグを持っているのが見えた。お財布や保険証や何か、大事なものがまとめて入れられたバッグ。
眠ってしまった僕は、LやJと同様に、救急車で運ばれるらしい。
行き先はきっと、あの大学病院なのだろう。
家の前に停まる救急車の後ろに、父のオンボロ軽自動車がガレージから出されて停まっている。
歩道に立つ父と、その横にLとラファエル、そしてアイの姿も見えた。
父は、救急車に乗らずに自分の車で病院へ行くつもりなのだろう。
白衣の救急隊員が後部ハッチを閉じて助手席に乗り込み、救急車が走り出す。
それを歩道で見送っていた父が、アイとLにオンボロ軽自動車を指して何か云っている。
かすかに聞こえた感じでは、ふたりに「家まで送るよ」とか何とか云っているようだった。
アイは、工事現場の向こうの方を指さしながら、首を横に振る。
「あの駐車場に自転車を置いて来たから」とか、夕暮れ時の風に乗ってアイの甲高い声が途切れ途切れに、屋根の上まで聞こえた。
父が助手席と後部座席のドアを同時に開け、
「じゃあせめてその駐車場まで。さあ、Lちゃんはワンちゃんと後ろに乗って」
そう云ってふたりを促している。
いつもの執事ポーズは、今日は忘れているらしい。
いや、さすがに本物のお嬢様であるLを相手にあのポーズをしてみせるほど、厚顔無恥ではなかった、という所かな。
「わーい、Kのおじさん、ありがとー」
いつもの如才なく物怖じしないLの無敵のコミュ力で、僕が寝ている間にすっかり父とも打ち解けてしまったみたいだ。
にこにこ笑いながら、Lはラファエルを促して後部座席に乗り込んだ。
ボックスタイプの軽自動車なので、後部座席はわりと広いのだけれど、それでもラファエルには少し窮屈そうだ。
「じゃあ、遠慮なく。ありがとう」
アイがぼそぼそ云って、大きな体を折り曲げるようにして、狭い軽自動車の助手席に収まった。
父が運転席に乗り込み、オンボロ軽自動車が走り出すのを、僕は何だか不思議な気持ちで、屋根の上のNの視界から見送っていた。
Lの事だから、きっと父と母には、上手に説明してくれたのだろう。
その場にアイもいてくれたのは、僕としてはとても助かった気がする。
Lが心配だったわけでは全然ないのだけれど、だからと云ってLひとりに全部任せてしまうというのは、何だか心苦しい気がしていた。
あの口下手なアイが実際に何かの役に立ったかどうかはさておき、父と母とすでに面識のあったアイがその場にいてくれた事は、Lも多少は気が楽になっていたのでは、と思う。
西日の差す大通りをまっすぐに進み、父の車は交差点を右に曲がると、あの工事現場の白い鉄の塀の向こう側へ消えて、見えなくなった。
車を追っていたNの視界が、すーっと手前に動いて家の前の通りの向こう側で止まる。
電柱の上に、彫像のように黒いシルエットになったカラスが一羽止まっている。
クロちゃんだろう。
Jもクロちゃんと一緒に、上から僕らを見守ってくれていたらしい。
背後でかちゃっと音がして、東屋の後ろの砂浜に、Jのお庭へ続く窓が開いた。
窓から、ふわりと砂浜へ降り立ったJは、左腕にクロちゃんの意識体を乗せている。
爪が痛くないのかなと心配になってよく見ると、Jの左腕には丈夫そうな革のプロテクターが嵌められていた。
「K、早起きだね。寝てなくてだいじょうぶなの?」
おじゃまします、と律儀にお辞儀をして、東屋に入って来ながら、Jが僕に尋ねる。
早起き?
「うん。わたし、あの砂浜で眠っちゃった後、意識もしばらく寝てたよ。翌朝くらいまでかな」
東屋のベンチに腰掛けながら、Jはそう云ってふふっと笑った。
そうだったの。
僕は、とりあえず、だいじょうぶそうだった。
体は、キクヒコさんに酷使されていたけれど、意識は、今日もずっとNの中にいたので、それほど疲労を感じていない気がする。
と云うより、いろいろと気になる事が多すぎてのんびり寝ていられなかった、というのが正直なところかもしれない。
大量にインプットされた情報を整理するためにも、本当は睡眠が必要なのだろうけれど、情報量が多すぎてそれどころではない、と云うか。
操縦席は、東屋の真ん中辺りにどんと置かれていたので、椅子をくるっと90度回すと、ベンチのJと向かい合わせになる。
そこまで考えて、ここに操縦席を置いたわけではなかったけれど。
いや、操縦席もNの視界の窓も、気づいた時にはここに置かれていたものだった。
無意識に僕が出していたのかな。
「いいえ、それは、ワタシが出しました」
ふふんと鼻を鳴らしてNが云う。
「ここはアナタの意識空間ではありますが、今はワタシの中でもあります。出せるのではと思い、試してみたところ、うまくいきました」
さすが、ベテラン執事
僕が眼を覚まして、すぐに外の様子が見えるように準備しておいてくれた、と云う事なのだろう。
Jが何か云いたそうに僕の顔を見て、僕の膝の上にちょこんと座るNを見て、少し微笑んで眼をそらし、オレンジの海を見る。
オレンジの海には、静かに寄せては返すやさしい波音だけが響いていた。
そう云えば、と思い出して、東屋から空を見ると、明るいオレンジ色のそこには、もう黒いしみのようなまだら模様もすっかり消えている。
いつの間にか、元通りに回復していたらしい。
「Lを待ちます」
ぽつりと、Nが云った。まるで、沈黙の言い訳をするみたいに。
海を見ていたJがNに視線を戻し、にっこり笑ってうなずいた。
実を云えば、僕もさっき眼を開けてすぐに気になって、Nに尋ねようとして、やめていた。
なんとなく、みんな揃ってからの方がいいと思って。
「はい。願わくは」
そう云いかけて、めずらしく口ごもり、Nは黙り込む。
願わくは
ガブリエルも、キクヒコさんも、「みんな」なのだろう。
海とのつながりを「失くした」キクヒコさんが、ここへ来れるかどうかはわからないけれど。
ふわりと、「オレンジの海」に風が吹く。
柑橘系の果物のような、甘くて爽やかな香りのするやわらかな風。
この風も、アルカナの星と同じものなのだろうか。
ぼんやりと、そんなことを考えて、あの地下での、Mの「昔話」を頭の中で反芻していた。
そんな静けさを打ち破るのは、いつもLの声だ。
「あれ?K、おまえもう起きてたの」
オレンジの海に、陽気な声が響いた。
「なんだ、妙に静かじゃね。まだ寝てるのかと思ったぜー?」
白い星の砂浜に、Lの秘密基地へ通じるドアが開いている。
Lの姿は、見えないけれど。
「あーやっぱりネコチャンか。おまえ、いきなり眠っちゃうし、もしかしてラファエルに入っちゃったか?と思ってちょっと焦ったぜー。あーいや、別にラファエルでもいいのよ?でも慣れてるネコチャンの方がより安心だよねー」
何か急いでいるのだろうか、Lはそう捲し立てるように云う。
「L、どうしたの。お家まで送ってもらったんでしょ。何かあったの?」
Lの慌てぶりを不審に思ったらしい、Jがそう尋ねる。
「あー送ってもらって、家には無事に着いてるよー。Kの親父さんも、もう病院へ向かってる。ちょっとね、家ん中がバタバタしててさー」
いつもの陽気な口調だけれど、やっぱり少し気が急いているらしく、Lはいつもよりかなり早口だった。
お屋敷の中を小走りに移動しながら話している、みたいな感じ、かな。
「あ、もしかして、そっちはオレ待ちな感じ?あー、じゃあ聞いてるから、どーぞ先に始めてもらっていい?てか、ネコチャン側の話だろ?だったらオレも今すぐ聞きたいし」
こちらの返事も待たずに一方的にそう捲し立てて、Lの声はぷつんと途切れた。
ドアはまだ開いたまま、なので、こちらの声は聞こえるようにしてくれているらしいけれど。
「承知しました。では、「こちら側」の状況を2点、共有しましょう」
すっと猫背を少し伸ばして、Nが口を開く。
「1点目は、あなた達3人が、キクヒコの「輪」で飛ばされたところから、です。キクタ、あなたはあの視界がぐるぐる回転するような感覚を覚えていますか?」
Nが僕を見上げて、そう尋ねる。
視界がぐるぐる
もちろん、覚えてた。
Jもうなずいてる。
Lも、さっきあの駐車場で「ぐるぐる」について触れていたので、覚えてるはず。
Nはひとつうなずいて、
「推測ですが、あの「ぐるぐる」はおそらくM-0の能力でしょう。他人の意識体を引き摺り出して自身の意識領域に引き込む、あるいは隔離する、そんな能力と思われます。根拠はふたつ。ひとつ目はキクヒコです。あの能力によってワタシ達とは別の場所に隔離されていた。ふたつ目は、まさにあの時です。あなた方がキクヒコに飛ばされた時、ガブリエルが、ワタシから引き摺り出されました」
淡々と語るNの言葉に、事の重大さが今頃になってじわじわと湧いてくるような感覚がした。
ガブリエルが、引き摺り出された?
「はい。あの時、あの場所、M-0の意識空間にいたのはワタシの意識体とそれを胸に抱いたガブリエルの意識体です。かの「能力」で「引き摺り出された」と云ったのは、地下空間にいたワタシの体から、ガブリエルの意識が、です」
ゆっくりと一言ずつNはそう説明してくれたけれど、僕は混乱していた。
つまり、最初の「ぐるぐる」でMの意識空間であるあの灰の海に引き摺り込まれた時には、まだ、ガブリエルの意識はNの体の中にいた、という事。
それが、二度目の「ぐるぐる」で、Nの体からも引き摺り出された。
「その通りです。もっとわかりやすく云うなら、あの時、キクヒコがアナタ達を飛ばすのがほんの数秒でも遅ければ、アナタ達の意識も、それぞれの体から引き摺り出されていた、その可能性は高いと思われます」
意識体を肉体から引き摺り出す能力?
何も声は聞こえなかったけれど、この話を聞いているはずのLはきっと思っているはずだ。「何それチートじゃん」と。
そしてそれは、何というかとても、アルカナらしくない能力のように、僕には思えた。
「それで、ガブリエルは?あの子、無事なの?」
Jが尋ねると、Nは一瞬の間をおいて、うなずく。
「はい、おそらくは。とっさに、ワタシはそれをキクヒコに伝えようと彼を呼びました。キクヒコはそれには答えず、すぐにガブリエルを「輪」で飛ばしました。ワタシとガブリエルを、ではありません。ガブリエルの意識だけを飛ばしたのです。キクヒコが何かを察してそうしたのか、ガブリエルの意識だけをどこへ飛ばしたのか、それはワタシにはわかりかねます」
淡々と、Nは云う。
「そしてワタシに「大丈夫だ、間に合った」と云うなり、今度はワタシを飛ばしました。あの地下空間にいたワタシの体を、です。ワタシが飛ばされた先は、アナタの屋根裏部屋です」
説明終わり、と云うみたいに、Nはぺろりと鼻を舐める。
危機一髪だった、のだろうか。
Mは、ガブリエルの、そして僕ら全員の意識を、体から引き摺り出して、どうするつもりだったのだろう。
間一髪、キクヒコさんの「輪」のおかげで僕らは助かったけれど、もしMの思惑通り、全員の意識が体から引き摺り出されてしまったとしたら、いったい、どうなるのだろう。
最後に見た、キクヒコさんの姿が脳裏によみがえる。
映りの悪いテレビ映像のように、全体にノイズが走り、音声も途切れ途切れにしか聞こえなくなっていた。
意識体を引き摺り出して意識空間へ引き込む、あるいは隔離する?
隔離された意識は、あんな風に不安定になる、のだろうか。
Mの目的は、相変わらずわからないままだったけれど、何か得体の知れない恐怖を僕は感じてた。
まるで足元から、底なしの泥沼に引き摺り込まれるような、そんな恐怖。
もうひとつ、さらに気になるのは、Nも「わからない」と云ったガブリエルの行方だった。
キクヒコさんは、ガブリエルの意識を、どこへ飛ばしたのだろう。
彼が云ったという「大丈夫だ、間に合った」
その言葉は、ガブリエルの事を云ったのではないのかな。
やさしい波音だけが、オレンジの海に繰り返し聞こえている。
僕は僕で物思いに沈み、Jも何かを考え込んでいるようだった。
僕らはお互いに何も云えず、ただ黙り込んでいた。
「はっはーん、納得だぜー」
もはやお約束のように、沈黙を破る陽気な声がして、半分ほど開いたままだったLの秘密基地へのドアが、ばーんと勢いよく開け放たれた。
何故か腰に手を当てて決めポーズのLが、僕らを見てニッといつもの笑顔を見せている。
納得だぜー?
Lは何を納得したのだろう。
「うわ、おまえ、何この椅子、かっこいいじゃーん」
すっかり慣れ親しんだ我が家のように東屋へ入ってくるなり、Lは僕の座った操縦席をぺたぺた触ってから、どっこらしょ、とJの隣に腰を下ろす。
「ガブリエルは無事だよ。あいつ、体に戻ってた」
ニッコリと満面の笑みで、Lはそう云った。
一瞬、Lが何を云ったのか、僕にはわからなかった。
ガブリエルは無事だよ
それは、いい。
それは、良かった。本当に良かった。
あいつ、体に戻ってた
体に戻ってた?
いったい、どうやって?
Nの話では、ガブリエルは「ぐるぐる」でNの体から引き摺り出され、意識体の状態だった。
意識体のまま、「輪」の能力で飛ばされた、はず。
それゆえに、体に戻りやすかった、という事なの?
けれど、キクヒコさんの「輪」の能力は、行き先を選べないはずでは。
「はい。正確には、提示された行き先候補の中からしか、選べない、です。かつ、行き先候補となり得るのは、自身が行った事のある「場所」のはずです」
行った事のある場所
「輪」で飛ばそうとしていたのは、ガブリエルの意識
その行き先候補の中に、ガブリエルの体が提示されていた、って事?
「そーなんじゃね。てか、実際、あいつがあいつの体に戻ってる以上、そーとしか思えねーよな。じゃあキクヒコはガブリエルの体に入った事あるのか?って事になるけど。いや、「行った事のある場所」ってのが、能力者本人が、ではなくて、飛ばす対象が、だったとしたら?ガブリエルの意識なら、当然、ガブリエルの体に行った事あるよね、一度だけ、もうだいぶ昔のことだけど」
一度だけ、もうだいぶ昔
自分で云った皮肉が面白かったのか、Lはぷっと吹き出して、楽しそうにけらけら笑ってた。
そうなのだとしたら、幸運というか何というか。
Mがガブリエルの意識体をNの体から引き摺り出してくれたおかげで、その行き先候補に、ガブリエルの体が提示された、のだとしたら。
「幸運ねー、確かになー。まあでもネコチャンの中にいたまんまだったとしたら、何の問題もなく一緒に屋根裏に飛ばされてたんだろーから、どっちが幸運だったんだか、って話だよなー」
意味深に、Lは何か含むように笑っている。
「それで、Lはお屋敷で何してたの?バタバタって」
Jが尋ねると、LはJの顔をまじまじと見て、青い眼をぱちぱちと瞬いてみせた。
「おいおい、おまえ、本気で云ってんの?8年間眠ってたやつが眼を覚ましたんだよ?そりゃもうお屋敷は上を下への大騒ぎってやつじゃね」
肩をすくめるLに
「あ、そっか」
てへへ、とJが頭をかいて苦笑する。
「まあ、お屋敷中が大騒ぎになったのは、あいつが眼を覚ますなりご乱心召されたからなんだけど」
Lは肩をすくめたまま、ふっふーといつものように陽気に笑って云う。
ご乱心召された?
ガブリエルが?
「おう。部屋に付き添ってたメイドさんが泣く泣く云う事にはだな。・・・ガブリエル坊っちゃまは眼を覚ますなり何か大声で叫んで、体中につながってた線を引っぺがすわ、点滴を引っこ抜いて放り投げるわ、大暴れ。そんで両手を振り回したもんだから、その辺に置かれてた機械やら何やらがバタバタ倒れて、火花を散らしたり煙を上げたり、倒れた機材がぶつかって温室のガラスが割れるわで、まるで戦場のような有り様だったって」
何か大声で叫んで?
視線を感じて下を向くと、Nと目が合った。たぶん、同じ事を考えていたらしい。
「はい。「キクヒコめ」でしょう」
困った顔で、Nがそうつぶやく。
Lがニヤニヤしながら云う。
「はっはー、まあそんなこったろーと思ったぜー。どーせあいつ、しばらくはネコチャンの中にいて、自分の体に戻るつもりなかったんだろー?それをあの空気読めないキクヒコが、有無を云わせずに体に戻しちゃったもんだから、そりゃいかに穏和なガブリエル坊ちゃんでもキレるよねー」
戻るつもりは・・・、確かに「しばらくはNの中にいるつもり」とか云ってた気がする。
空気読めないキクヒコ
フォローするわけではないけれど、ガブリエルの意識体がNの体から抜き出された状態で、「輪」の行き先にガブリエルの体が表示されていたのなら、否も応もなくそうせざるを得なかったのかもしれない。
あるいはそれすらも、何か狙いがあっての事?と深読みする事もできそうではあるけれど。
「しかも眼を覚ましてみたら、全身コードだらけでわけのわからん機械につながれて、改造人間みたいにされちゃってたら、さー。まあ、あいつの気持ちも多少はね、わかんなくもねーかなー。オレだってあのひらひらパジャマ、おまえがいなけりゃあの場で脱ぎ捨ててたかもだぜー?」
そう云ってLは、はっはっはーと陽気に笑い飛ばしてる。
ひらひらパジャマ
半年間眠っていたLが、お母さんに着せられていた、襟と裾に大きなフリルのついたかわいいパジャマ。
そう云えばそんな事もあったな、と思い出す。
ほんの少し前、せいぜい先週くらいのはずだけれど、それもずいぶん前の事のような気がする。
「それで、ガブリエルは?」
オレンジの海を振り返りながら、JがLに尋ねる。
「さあね?フテ寝かな。まあ冗談はともかく、8年ぶりだからねー。半年ぶりのオレですら、あの頭痛と関節ギシギシで起きるのに難儀したからなー、しばらく起きれねーと思うぜー。あ、意識の方はどーだか、わかんねーけど」
そう云って、Lもオレンジの海を振り返る。
僕も眺めてみたけれど、ガブリエルの部屋につながる窓は、どこにも見えなかった。
たぶん、ガブリエルの意識は、あの大きな虹の見える白い部屋のベッドで、すやすやと眠っているのだろう。
「それで、ネコチャン。2点目は?」
Lが、僕の膝の上のNに尋ねる。
そうだった、Nは「2点、共有します」と云ってた。
「はい。Lが来てから、と思い、お待ちしていました。屋根裏の、キクヒコのノートパソコンついて、です」
Nがそう云いながら、屋根裏に向かっているらしい。
視界の窓の風景が動いて、Nが前肢で器用に屋根の天窓をくるりと開くのが見えた。
「ノートパソコンは、消失しました」
ひらりと屋根裏の床に飛び降りながら、Nは淡々とそう告げる。
ノートパソコンは、消失
なくなった?
確かに天窓の鍵はかけられていなかったので、入ろうと思えば誰でも入れる、けれど。
「はい。今朝、ワタシ達がここを出るまでは間違いなく、ここに置かれていました。この床の上に。しかし先程、キクヒコに飛ばされてこの屋根裏へ戻った時には、すでになくなっていました」
床の上には、ノートパソコンが置かれていた場所の周囲に、その形に沿って埃がうっすらと積もっていて、確かにそこにあった事だけはわかる。
ご丁寧に、壁の電源につながっていたケーブルも一緒になくなっていた。
丸ごと一式、なくなってる。
ひとりでに消えるはずはないので、誰かが、持ち去ったのだろう、けれど。
でも、いったい、誰が?何のために?
「床の上には、ネコチャン以外の足跡はなさそーだねー。て事は、犯人は、ネコチャン以外のネコチャンか、飛べるやつだねー」
Lが視界の窓をじっと観察して云う。
犯人
ネコチャン以外のネコチャン
飛べるやつ
飛べる、で、なんとなく、目が合ってしまうと、クロちゃんが云う。
「私、違う、よ?」
それは、そう。もちろんクロちゃんではありえない。
今日はずっと、僕らと一緒だったのでアリバイもばっちりだし。
ノートパソコンとは云え、だいぶ旧式でかなり重いはず。
クロちゃんや他のネコチャン?に持ち上げられるとは思えないし、ましてやそれを持ったまま飛ぶなんて無理だ。
持ち運べる事、で考えれば、持ち去ったのは間違いなく人間、なのだろう、けれど。
飛べる、人間?
「そして、ここにノートパソコンがある事を知ってる、あるいは今日知ったやつ、だなー。もう名探偵が登場するまでもなく「あいつ」しかいなくね?」
Lは苦笑を浮かべてる。
飛べるやつ、の時点で、僕の頭の中にもひとつの映像が浮かんでいた。
ふわふわと、「泡」を持って飛ぶ「あいつ」の映像だ。
「うん。まあ、あいつなら、ふわふわ飛ぶまでもなく、「輪」でひとっ飛びだよね」
あ、それもそうだ。
キクヒコさんなのだとしたら、犯人ではなく、本来の持ち主だ。
預けていた自分の持ち物を取りに来て、それをどこへ持って行こうが、それは本人の自由だけれど。
何故このタイミングで。
記憶の大半を失ったキクヒコさんは、屋根裏のノートパソコンの存在を忘れていた、とか?
それを、今日、ガブリエルの話を聞いて思い出し、回収した、のだろうか。
いや違う、ガブリエルがノートパソコンの話をしたのは、Mの意識空間、あの灰の海に引き摺り込まれた後、だった。
その時点では、キクヒコさんはMに隔離され、眠っていたはず。
そう考えて、思考はまた、さっきのLとの話に戻ってしまう。
誰が敵で誰が味方なのか
キクヒコさんは、本当に「記憶」と「海とのつながり」を失くしているのか。
Lが僕を見て、ニッと笑う。
「ラスボス感で云えば、「実は全部覚えてたキクヒコ」も有力候補のひとりだよなー。能力もチートくさいしさー」
ラスボス感、というのはよくわからないけれど、何となくLの云わんとしている事はわかった気がする。
キクヒコさんが実は全てを覚えていて、海とのつながりもあるのだとしたら、今こうしてここで話している事も含め、最初から全部、僕らの事をお見通し、という事になる。
これまで僕らがしていた事は全て、実はキクヒコさんの手のひらの上で踊らされていたに過ぎない、のかもしれない。
「も」有力候補のひとり
そう云ったLの、他の候補は誰なのだろう。
「それ聞いちゃうの。聞くまでもなくね?」
Lはそう云って、ふふんと笑って、
「チート能力でいえば、Mちゃんだろーね。人の意識を体から引き摺り出す?おまえの云う通り、ぜんぜんアルカナっぽくないよね。何か「見える」とか「聞こえる」とか、せいぜい「認識を一部消す」とかかわいいコト云ってたのが、いきなり「意識を引き摺り出す」だと?子供のケンカに突然プロレスラーが出てきちゃうみたいなもんだよなー。ラスボス感はハンパねーけどさー。でも、正体に関しちゃ、いまだ謎なんだよなー」
腕組みをして、考え込む表情になる。
同じチート級の能力でも、キクヒコさんの「輪」はまだアルカナっぽくはある。
それが、逃走に特化している、というところ、戦わずに逃げる、というのがすごく、アルカナっぽい気がする。
Lがそれをチートだ、と云うのは、おそらく能力が便利過ぎるから、なのではと思う。
元々、人間が使う事を想定されていない、意識生命体であるアルカナが持っていた能力だから、なのだろうけれど、「泡」も「線」も、そして僕の「音」も、正直、使い勝手が悪い。
と云うより、「音」に関しては未だにちゃんとした使い方すらよくわからない。
それが、あの「輪」にはない。ただただ、便利だ。
まるで人間用にカスタマイズされた能力でもあるかのように。
「おっと、それだ」
ぴこん、と、LがJみたいに人差し指を立てる。
それだ
どれだろう。
「アルカナは意識生命体。眼には見えない、肉体を持たない生命体。それが、「輪」で飛んで逃げる。おかしくね?」
Lが右の口角だけをにゅっと吊り上げてニヤリと笑う。
普通に怖い笑みなのだろうけれど、美少女のLだとそれもかわいく見える。
いや、そうではなくて、確かに、おかしい。
肉体を持たない生命体、姿の見えない生命体が、敵から逃げる
見えないのに?
姿が見えない、というのは、ある意味、最強の防衛手段である気がする。
見えないのだから、襲われる心配もなく、狙われる事すらない、のでは。
だとすると、キクヒコさんの「輪」の能力は、アルカナが本来持っていたもの、ではないのかもしれない。
肉体を持つ、人の意識に入った事によって、新たに身につけた力、とか、なのかも。
突然変異的な何か、だろうか。
「でもさー、もうひとり、ラスボス候補のチート能力者がいるよねー?」
今度は両方の口角を上げて、ニヤニヤ笑いながらLが云う。
もうひとり
ラスボス候補のチート能力者
そんなのいただろうか。
ヌガノマや、ルリおばさんの能力は、いまだによくわからないし。
「あ、K?」
唐突に、Jにそう呼ばれ、びっくりした。
え、僕?
「正解だー。「あいつ」がやって見せてたように、「王」には全部の能力が使えるんだとしたら、ね。
チート能力だけで云えば、おまえも立派なラスボス候補だぜー」
ふはははー、と、どっちがラスボスなのかよくわからないような笑い方をして、Lは楽しそうに云った。
全部の能力
あのヘンテコなヘッドホンとゴーグルを付けたら、本当にそんな事ができるのだろうか。
そう考えて、ハッとなる。
あのヘッドホンとゴーグルを首にかけたまま眠ってしまって、そのまま救急車で運ばれたけれど、だいじょうぶかな。
さすがに、大学病院で患者の所持品を勝手に捨てたりはしないだろうけれど。
いや、母が、ゴミかガラクタと勘違いして捨ててしまうという可能性も、なきにしもあらず、では。
「あれー?おまえ、あのヘッドホンとゴーグル、オレにくれるって云ってたよね?「僕はあんまり好きじゃないから、体を取り戻したらLにあげるよ」って、あの公園で云ってなかったか?」
くっくっと、さも楽しげに笑いながら、Lが云う。
そんな事を云ったような気もするけれど、何がそんなにおかしいのだろう。
「いやあ?いらないって云ってたのに妙に心配してるなーと思ってねー?安心しろ、救急車に乗り込む前、担架に乗せられる時点で、オレがそっと回収しといたから。「あ、これ、じゃまなので預かりますねー」みたいな顔して。みんなそれどころじゃない感じで、たぶん、誰も気づいてねーけど」
なるほど、それはありがとう。
「個人的に、気になってたからねー。なんたって「最後の王K-0が使ってた秘密のアイテム」だろー?何か、能力を使いやすくするための魔改造とかされてんのかも、ってね。ちょっとこのまま預かって、いろいろ調べさせてもらうぜー」
魔改造って、何。それ、Lにわかるの。
それに、最後の王K-0が使ってた秘密のアイテム、かどうかも、本当のところはわからないけれど。
キクヒコさんがどこかその辺で拾っただけのガラクタかもしれないし。
「おっと、話がそれてるぜー。いやあ、積もる話が山盛りてんこ盛りで、嬉しいやら楽しいやらだねー」
ふっふー、と楽しそうにLは笑う。
嬉しいやら?楽しいやら?
それじゃどっちもハッピーなのでは。
まあ、至極幸せそうで、何よりだけれど。
「えーと、なんだっけ?消えたパソコンの話だったよなー。そのパソコンに入ってたデータが、ガブリエルの云うようにあの地下施設のアルカナとロリポリに関する研究データだったんだとしたら、確かに惜しい事したなって感じだなー。かなり見てみたかったけどねー。でも、あの場所をオレたちに見せたかったってあんなに頑張ってたキクヒコが、パソコンを持ち去ったのは何でだ?地下は見せたかったけど、パソコンには見せたくない何かが入ってたのかな。だったら余計に見たくなるよねー」
ふひひ、とへんな笑い方をして、冗談めかしてLはそう云ったけれど、確かに矛盾してる。
うちの屋根裏に置いて行った時点で、いずれは誰かに見られることは確実で、むしろそれが狙いだったのではと思ったくらいだったのに。
今になってそれを、キクヒコさんが持ち去ったりするだろうか。
パソコンを持ち去ったのはキクヒコさんではなく、もうひとりのラスボス候補、Mの仕業、という可能性は。
「うん、キクヒコじゃないんだとしたら、Mちゃんなんだろーけど、じゃああいつも飛べるのか?ってなるよね。あるいは、キクヒコでもMちゃんでもなく、アメリカ軍の諜報部員てきなやつ、とかね」
Lはいつも通りの陽気な声でそう云ったけれど。
アメリカ軍の諜報部員?
何故かダークスーツに身を包んだイケメンが、ヘリコプターから命綱1本でぶら下がってうちの屋根裏に侵入するイメージが頭に浮かぶ。
何とかインポッシブルてきなやつだろうか。
まさかCIAとか、そんなのまで出てきちゃったら、もう僕らではお手上げなのでは。
「CIAは中央情報局だから、軍じゃないけどねー。軍の諜報機関は、なんだっけ?DIAとか、だったかなー。まあなんでもいいけど、そーいうのは、まず出て来ねーぞ、たぶんねー」
にやりといつものようにLは笑う。
本当に?
アイじゃないけれど、何とかファイル的な陰謀論みたいなのは、ごめん被りたいというか、ちょっと勘弁してほしいというか。
でもそれはともかく、
Mがアルカナでも王でもないのだとしたら、アメリカ軍の研究者側の何か、である可能性は高い気がする。
それなら、A-0やロリポリ、80年前の事情に詳しいのもうなずける、ような。
思い返せば、Mが「彼ら、アメリカ軍、研究者」と呼称を強調するように連呼していたのも、アルカナっぽさを出すための演出だったのかもしれないけれど、妙にわざとらしかったし。
自身を「アルカナ」「王」と称する点も、Mが研究者側の誰かなのだとしたら、キクヒコさんが指摘した通り、ちょっと考えが浅はかというか、子供が相手だからと侮りすぎでは、と思える。
ただ彼らが、キクヒコさんとあんまり仲良くなかったのかどうかまでは、さすがに今の時点ではわからないけれど。
「ほほう、さすが「キクタ」だねー」
Lは楽しそうにふむふむと笑って、
「よし、じゃあついでだから、オレの予想を披露しちゃおーかな」
よっこらしょ、と東屋のベンチにあぐらをかいて座り直す。
「ちょっと、L!キミ、制服!スカート!」
Jが急に大声で云うなりすっくと立ち上がり、僕の視線を塞いだ。
そのまま、「Nちゃん借りるね」と僕の膝の上からNを抱き上げて、くるりとLの方を向き、あぐらをかいたLの足の間にNをちょこんと座らせた。
にやけた顔になったLが
「ネコチャンネコチャン~」
と鼻声でNを抱き上げようとすると、
「だめ!Nちゃんはここ!持ち上げないの!」
ぺちんと素早く、JがLの手を叩く。
Lは口をとがらせながらも、しぶしぶNから両手を離す。
びっくりした、けれど、
なるほど、JもLにはなかなか厳しいんだな、と僕は妙に納得していた。
「あぐらはいいけど、まる見えはダメでしょ」
びしっと人差し指を立てて、Jは云う。
「へーい」
Lは降参するみたいに両手を上げて、それでも顔だけは下を向けてNの頭をくんくんしている。
男の子のような喋り方で細かいことは気にしないLと、まじめでまっすぐでしっかり者のJ。
あらためて、ふたりはとてもバランスの取れた良いコンビなんだなーと思った。
「で、なんだっけ?」
すっかり毒気を抜かれてしまったようで、Lが肩をすくめて僕を見る。
ええと、アメリカ軍とかMに関する、Lの予想を聞かせてくれるって。
「あーそうそう、それなー。さて、どっから話すか、最初からでいっか」
自問するように小首をかしげてから、Lはひとつうなずいて、話し始める。
「まず前提として、海沿いのクレーターも工事現場の地下も、「認識の喪失」がかかってるとオレは踏んでるぜー。永年に渡って放置されて、誰の手も入ってない点、それなのに電気や水道は通ったままになってる点、それって、あの公園や、ニュータウンの工事現場と似た感じがするよねー」
確かに、云われてみれば、だった。
あの公園も、噴水こそ壊れたまま放置されていたけれど、街灯の電気や水飲み場の水道は生きていた。
たぶん、あの公園は市が管理しているのだろうけれど、人々の認識の外に置かれているから、噴水の修理はしてもらえない。でも逆に、認識されていないために、誰も電気や水道を止めたりはしない、という事かな。
廃線の駅の水道が生きていたのも、海沿いのクレーターの地下に電気が通じていたのも、そう。
工事現場の地下の電気、灯りや扉の電子ロックも、同じなのだろう。
「ただ、蛍光灯はさすがになー、管や器具の寿命を考えると放置されてたんだとしたらとっくに切れてるはずだから、キクヒコか、それに近い誰かが定期的に交換してたんだろーね」
キクヒコか、それに近い誰か
研究所の関係者、だろうか。
「うん、ほんとにそんなやつがいるのかどーかは、まだわかんねーけど。あ、それと、ついでに云っちゃうと「認識の喪失」もまだ能力が完全に判明したわけじゃないんだよねー。おまえが使った職員室と公園、それとうちの屋敷、その3回だけ。だから確定するにはまだまだデータが足りないんだよなー」
それは、僕も同感だった。
なんとなくそういう力なのだろう、という程度で、細かい仕様みたいなところは、よくわからない事の方が多い気がする。
「うん。能力者に効かないのは、ほぼ間違いなさそうだけど、じゃああの地下施設に能力が使われてたとして、そこにいた能力者以外の軍の研究者とか兵士はどんな状態だったんだ?とかね。そいつらがすでに本国に引き上げてて、能力が効いてるから今はあんな風に放置されてるんだろーな、とは想像できるけど」
あるいは、能力が使われたタイミング、なのかもしれない。
能力が使えるのは、アルカナが入った能力者。
軍の関係者がいる間は、軍が物理的にあらゆる手段で地下施設を隠そうとしていたはず。
その軍がいなくなって、残された能力者、たぶんキクタやキクヒコさんが、自衛のために能力を使ってあの場所の「認識を消した」のだとしたら。
「なるほどなー、それなら辻褄が合うぜー。じゃあやっぱり、軍の諜報機関か何かが本国から出張って来る心配は、ひとまずなさそーだなー。ただ、Mちゃんの存在を考えると、あっちにも能力者がいる可能性だけは覚えておいた方がいいかもだけど」
Lの云う事ももっともだった。
もしも認識が消されていないのであれば、地震の後、本国があの施設やロリポリを12年も放置しておくはずがない。
いまだに放置されているという事は、認識は消されていると見て間違いなさそうだった。
でも、目的は不明だけれど、どう見てもキクヒコさんとは相容れなさそうなMという存在がいるのも事実。そして、その正体もまだ不明だけれど、Mが能力者である事は確か。
「昔話」の詳細を知っている点からみても、軍関係者である事はほぼ間違いなさそう。
軍関係者で能力者、キクヒコさんとはあまり仲が良くない。
それだけでは、どこの誰やらさっぱり見当もつかない。
「うん、そーだなー。ひとまず、そーいうやつがいる、って事だけ頭に入れておこーぜ」
Lにそう云われ、僕は妄想から現実へ引き戻される。
「施設の話に戻るぜー」
Lは陽気な声でつづける。
「あの一連の施設ができたのは、Mちゃんの「昔話」の通り、80年前のロリポリの落下がきっかけって事でまず間違いねーと思う。そんで、長年に渡って拡張が続けられて、海沿いとニュータウンが地下道でつながり、ニュータウンの地下には、研究所も出来てた。キクヒコが働いてた研究施設ってのも、たぶんそこなんだろーね」
つまり、ニュータウンは、その計画自体が人を寄せ付けないためのダミーだった、って事なのかな。
「うん、完全にダミーって事じゃなくて、ちょっと売れた段階で頓挫するってシナリオが始めからできてたんじゃねーかな。あんまり人の寄りつかない「ゴーストタウン」を作り出す計画って感じだろーな。あのロリポリの秘密を守るための、ね」
市郊外の新興住宅地、夢のニュータウン、というありそうな話を作り上げて、実際に分譲が始まるなり、企業が倒産してあっけなく計画は頓挫する。
そして人々の認識から消され、忘れ去られる。そこまで含まれた計画。
後には、ひと気のないゴーストタウンの出来上がり、というわけか。
そして、ショッピングセンター建設予定地は、初めから嘘だった。
何故なら、その地下にはロリポリとその落下地点のクレーターがそのまま残っているから。
「何もなければ、ロリポリとアルカナの研究はずっと続けられてて、今もあの施設は絶賛稼働中、だったんだろーけどなー」
何もなければ
何かがあったのは、12年前
「やっぱり、あの地震?」
Jが尋ねると、Lは大きくうなずいて、
「だろーねー。まず、今日さんざん歩き回って見ただけでも、かなりの規模の地下施設だよね。ちょっとした短期的な調査や研究だけって感じじゃ全然なくて、どっしり腰を据えて研究し続けるぞーっていう、さ。そのつもりで作られて、実際に稼働してたのは、ほぼ間違いねーと思う。それが、あの地震で、たぶん、本国から中止命令が出たんじゃねーかな。実際、海沿いの施設は津波の被害も被ってただろーしなー。研究は中止、施設は閉鎖、直ちに本国へ撤退せよ、そんな感じかなー。それくらい、きれいさっぱり、施設内には見事に何も残ってねーもんなー。たぶん、持てるだけ全部持って帰ったんだろーね」
ぴこん、と僕の人差し指が立つ。
キクヒコさんのパソコンについて、ガブリエルが云ってた。
何か大慌てで、個人用のノートパソコンに研究データを移した、ように見えた、というのは、まさに、その時なのでは。
「それだろーなー。撤退が決まって全部本国へ持って帰られたら、何も残らない。それでキクヒコは、個人のPCに大急ぎで研究所のデータをコピーして持ち出し、お友達のKの親父さんの家の屋根裏に隠した。なんで自分ちに隠さなかったんだって気もするけど、まあ相手は軍だしなー。念には念をって感じだったのかも」
「だって、自分ちは地下、でしょ?すぐバレちゃうでしょ」
Jにそう云われ、はっと息を飲む。
ガブリエルがいたら、たぶん同じ反応をしてたはず。
自分ちは地下?
キクヒコさん達は、地下に住んでいたの。
Jの勘の鋭さには、いつもながら驚かされる。
そう云えば、地下道で火事の話をした時にも、Jは云ってた。
「この先に、わたしたちのお家があったのかな?こんな、地下に?」って。
キクヒコさんも、4人の赤ちゃんも、本当にあの地下施設のどこかに住んでいたのだろうか。
「確かにねー。いくら地上を塞いで見えないように隠しても、中で働いてる連中が地上に普通に住んでて、例えば市内のマンションとかにね、そんで毎朝バスや自転車で出勤なんかしてたら、すぐバレちゃうよね、秘密の地下施設が。だいたい、あの規模の施設だから、関係者が数人ってことはないだろー?数十人か、ひょっとしたら100人以上いたのかも。しかも全員外国人だろーし」
100人以上
さすがにそれは、多すぎでは。
「いやあ、そーでもねーと思うよー?研究員だけじゃなくて、警備の兵士もいたはずだろー。それに長期の研究滞在となれば、災害救援の時の医者や看護士もそのまま残ってたかもだし、本国との連絡や物資の調達やら施設の管理やらで事務の仕事をする人もある程度必要だろーしなー。80年前から12年前まで、ざっと70年近くも続いた研究施設ともなれば、中で家族になるやつも出てくるかもだし、そうすると子供が生まれたり、ちょっとした街みたいになってたんじゃねーかと思うぜー。ほら、よく映画なんかで、米軍基地の敷地内に、西海岸風の居住区があったり、学校やお店や映画館なんかもあったりするじゃん。そんな感じ?」
えーと、つまり、それは・・・、
ニュータウンとは名ばかりのゴーストタウンの地下に、実は研究者や施設の関係者が暮らす本物の街があった、ってこと?
それはまた、皮肉と云うか、何と云うか。
「たぶんね。そー考えると、もろもろ納得がいく。逆にそー考えねーと、いろいろ無理がある。まあその素敵な地下の街も、地震で撤退しちゃったんだとしたら、今じゃゴーストタウンか、もしかしたら、燃えちゃったかも?」
あえて明るくさらっと、Lはそう云ったのかもしれない。
けれど。
燃えちゃったかも
地下の火災は、彼らが住んでいた地下の街が出火元だったのだろうか。
「わかんねーけどなー。燃えちゃったのは、研究所の方だったのかも知れねーし。あるいは、両方とも?いやまあ、火事の方が地震より後なんだから、どっちが燃えたにしても、もうすでに撤退した後で誰もいなかっただろーし。全部持って帰ったんだとしたら、燃えて困るような物も何もなかったのかもだけどねー」
キクヒコさん達以外には、という事だろうか。
地下施設には、キクタやキクヒコさんのような、日本人はどれくらいいたのだろう。
Lの云うように、地震でほとんどが本国へ帰還していたのだとしたら、火事が起きた時、地下に残っていた人は、何人くらいだったのか。
「最初に云った通り、この話は全部、オレの予想だからね。事実じゃないから、そこんとこ勘違いしちゃダメだぜー?」
そう云って、Lはニッといつもの笑顔を見せて、
「施設の性質から考えて、日本人は数えるほどだったんじゃねーかな。研究員や警備兵の現地採用なんてしないだろーしなー。キクタとキクヒコ、それと、ルリおばさんもかな。後は、キクタよりも後にA-0に感知されたアルカナの入った赤ちゃんで、キクタやヌガノマのように、事情があって家に帰れなかった人?そんな人がいたのなら、って条件付きだけどね。ってなると、やっぱり少なそうだなー」
淡々と語ったその言葉が、そのまま、あの人物にも当てはまる事になるんだな、と、僕はふと気づいてしまった。
キクタの後でA-0に感知されたアルカナの入った赤ちゃん
キクタやヌガノマのように、事情があって家に帰れなかった人
「あー「夢のあの子」ちゃんだなー。確かにそーだけど、別のパターンもあるな、いま気づいた」
ぴこん、と人差し指を立てて、LはJを見る。
「うん。わたしたちと同じ、あの地下で生まれた赤ちゃん」
すんなりとそう答えたJだったけれど、伸ばした人差し指はあごに当てたままだった。
まだ、何か考えているらしい。
「あ、ごめん、違うの。んん?違わないか。「事情があって家に帰れなかった」ってね、わたしたちが、地下に残ってた理由、にもなるなって思って」
Jが深く考え込む時のクセ、あごに当てた人差し指が、次第に上へ上がって来て、下唇をむにっと押し上げている。
アヒルみたいな口になっていて、それはそれでかわいいけれど。
ではなく、
事情があって家に帰れなかった
それが、
わたしたちが、地下に残ってた理由
4人の赤ちゃんが、軍の撤退に伴って本国へ帰るのではなく、施設に残されていた理由、かな。
「まあそーなんだろーねー。なんの事情が?ってとこまでは、わかんねーけど。だからオレたち4人は地下にいて、火事に遭い、キクヒコとルリおばさんに救出されて、教会へ。うん、たぶんそう」
Lは、さらっと云う。
まあ、さらっと云うしかないのだろう。
そこで急に重々しく語り出されても、困ってしまうし。
「まあね。人には見えねーへんなもんが見えてた時点で、子供心に、なんとなく予想はしてたからねー。あーきっとオレって普通じゃねーんだろーなーって。まさか、「地球外生命体」が中に入ってるとは、さすがに思わなかったけど。あーいや、ちょっとは思ってたかな?子供心の妄想とかで」
ふっふーと、Lは笑う。いつものように明るく元気に。
きっと普通じゃないだろうという予想
それは、覚悟のようなものかも知れないと、僕は思った。
まるで何かを悟ったみたいにどこか大人びた子供たち
そんな僕らは、実は何も悟ってなんかいなくて、ただとっくの昔に覚悟を決めていた、というだけなのかも知れない。
普通の子じゃないのだろう、という覚悟。
だから、ちょっとやそっとのことでは動じないし、ちょっとやそっとのことなら受け入れてしまえる。
地球外生命体が中に入ってる
それが、ちょっとやそっとのこと、なのかどうかは、わからないけれど。
「うん、見えないもんね」
ふふふ、とJが笑う。
もう人差し指はあごに当てられていなかった。
さっきのLの説明で、納得できたということなのだろう。
「あーそーねー。『あなた達は、実はタコみたいな姿の火星人です』とか云われたら、多少は凹んだりするかもだけどなー」
何故かMの口真似をしてLは云い、また自分で面白くなっちゃったのか、ひとりでくすくす笑っている。
今となっては、敵なのか味方なのかよくわからないラスボス候補になってしまったMだけれど、あの声とおだやかな口調は、決して嫌いではなかった。
だからあの声でアルカナの話を聞けたのは、結果的には、良かったのかもしれない。
「まあ、そーかな。記憶のないキクヒコが、おまえの顔と声で、あの長い「アルカナ昔話」すんのも、ちょっと聞いてみたかったけど」
ふっふー、とLは楽しそうに笑う、けれど。
記憶がなく、ゴーグルとヘッドホンをつけた僕の顔で、僕の声で。
想像してみたら、何だかもやもやした。
ガブリエルが「ぶん殴ってたかも」とか云ってたのは、そういう事だったのかもしれない。
それはさておき、
アルカナ。
たぶん、Mは、あえてはっきりと云わなかったのだろうけれど、僕らの正体は、アルカナ。
地球外の遠い宇宙から、ロリポリに乗ってやって来た、意識生命体。
「とは、云い切れねーぞー」
ニヤリとLが意味深に笑う。
違うの、かな。
「うん、体があるからねー。厳密に云えば、オレたちはアルカナじゃないよな。だけじゃない、って感じかなー」
体がある
確かにそうだ。
アルカナ、だけじゃない。
でも人間、だけでもない。
「じゃあ、アルカナ人間?」
Jがぴこんと人差し指を立ててそう云うと、Lは「げ」と変な声を出した。
「それはやめよう?アルカナ人間?何かやだ。昔のホラー映画とかに出てくる怪人みたいじゃん」
またLのこだわりの「やだ」が出た。
でも確かに、アルカナ人間は、僕も少し違和感を覚える、かも。
「ふむー」
Jは右手の人差し指をあごに当てて、
「じゃあ、縮めて「アニー」かな。ね、かわいくない?アニー」
まんざらでもなさそうに、ふふっと笑う。
アルカナ人間、縮めて、アニー?
うん、かわいいのでは。
「またそーやって、おまえは、すぐJを甘やかす」
Lはため息をついて肩をすくめながら、
「アニーね。まあ、アルカナ人間よりはいいか。歌って踊れそうな感じだしなー?」
またよくわからない事を云ってたけれど、Lも納得してくれたなら、まあ、よかった。

「おや、うちにも救急車が来たみたいだぜ?」
体の方に意識を集中するみたいに、すっと眼を閉じて、Lが云う。
救急車
8年ぶりに目覚めたガブリエルを、病院で検査してもらうため、なのだろう。
「ご乱心召された」時に、ケガとかしていなければいいけれど。
「あー、さっきちらっとのぞいてみた感じでは、だいじょぶそーだったよ。もうおとなしくなって、眠ってるみたいだった。ほんとにフテ寝してんのかもだけど」
Lは眼を開けて、困ったように苦笑する。
「眠っちゃった子を運んだばっかだってのに、次は眼を覚ました子を運ばなきゃで、救急隊員さんも今日は大忙しだなー。たいへんだねー」
苦笑したまま、Lは少し申し訳なさそうに肩をすくめてる。
本当に。
僕ら自身からしてみたら、救急車を呼ぶほどのことでもないように思えるけれど、事情のわからない家族にしてみたら、それは十分に救急車を呼ぶほどの一大事、なのだろう。
「Lは、病院に付き添わなくていいの?」
Jが尋ねると、Lは苦虫をかみつぶしたような「うえっ」という顔をして、
「退院がもう少し遅くて、おまえもまだ病院にいるんだったらねー?オレも付き添って病院で感動の全員再会ってオチでも良かったかー?」
またなんだかよくわからない事を云って、首を横に振る。
「いやいや、ここでオレまで顔出したら、アンドウ先生がストレスで卒倒しちゃうかもだろー?Kとガブリエルだけで十分。もう勘弁してやろーぜ?」
確かにそう。
Jが入院した時、廊下で初めて出会ったアンドウ先生の、アイを見つめる顔を思い出す。
いま思えば、そこにあったのは、医師として、父として、原因不明の奇病が、我が子にも襲い掛かるかもしれないという、恐れ、だったのだろう。
アイはきっとだいじょうぶ、僕らにはそれがわかっているけれど、先生にはそれがわかるはずもない。
そう云えば、とひとつ思い出して、
「J、アイの「泡」の色は、何色だった?」
そう聞いてみた。
Jは不思議そうな顔で僕を見て、
「アイの「泡」?あー「青」になってたね。どうして?」
小首をかしげている。
「青」か、「白」ではなく。
僕があの「夢」を見せられた時、可能性の話として、ガブリエルが云った「アイが「力」に目覚めたのかも」というのは、やっぱり思い過ごしだったらしい。
ざっと、JとLにその時の事を話した。
Lは少し難しい顔になって、
「それも「例外」ってやつだなー。ヌガノマが「大人に入って生き残ったアルカナ」で、Kが「人から人に入ったはじめてのアルカナ」、んじゃアイは?「赤ん坊に入ったのに目を覚まさないアルカナ」ってとこか?それとも、アイにはそもそも入ってないのかも?わかんねーなー」
首をひねって、お手上げと云うみたいに肩をすくめている。
僕の気持ちとしては、アイはアルカナの入っていない「普通の子」であってほしいと思ってしまうけれど。
Mが僕らに話すと予告して、話せなかった「あなた達の事」
その話の中に、アイは含まれていたのだろうか。
あの地下施設で生まれた赤ちゃんには、例外なくアルカナが入ってしまうもの
なんとなく、そんなイメージだった。
Mが語った「ロリポリの中にいる」が嘘だったのかはともかく、今現在、ロリポリの中はどうなっているのだろう。
まだ残っているアルカナはいるのだろうか。
「あーどうなんだろな。でもそれは、やろーと思えば確かめられるよね。またあそこへ行って、ロリポリの中に入ってみりゃいい。入れるんだろ、灰色の「泡」なんだから」
またさらりとすごい事をLが云い出すので、僕はびっくりする。
ロリポリの中に、入る?
「おまえ、怖いもの知らずのくせに、ロリポリだけは妙に怖がるの、面白いよなー」
Lは楽しそうにくすくす笑う、けれど。
いや、怖いでしょ。あんな大きな隕石みたいなダンゴムシみたいな。
地球外生命体だよ?
あ、いや、まあ、それを云うなら、アルカナもだけれど。
同意を求めてJを見ると、Jも何だかかわいい子供を見守るおねえさんみたいな眼で、僕を見てにっこり笑ってる。
え、Jも怖くないの。
僕がおかしいのかな。
「ううん、怖いよ。怖いよねえ」
Jはそう云ってくれたけれど、その云い方、ぜったい小さい子供をなだめる時のやつでは。
ふむ、とLの足の間でNが鼻を鳴らして、
「そう云えば、「キクタ」は虫があまり得意ではないようでした。特定の何かではなく、昆虫全般、でしょうか」
しみじみと懐かしそうに、そんな事を云った。
「ははあ、おじいちゃん譲りか。じゃあ仕方ねーな」
はっはーとLは軽く笑い飛ばしてる。
そんな、アルカナってそんな性質まで受け継ぐものなの。
「おじいちゃんには悪いけど、どのみちあの地下は、もっかいじっくり調べ直さねーとだよなー。研究所が今どんな様子なのかも見てみたいし、地下の街がほんとにあるのかも。あと、火事がどんなだったかも含めてね。もちろん、全員眼を覚まして、ガブリエルも動けるようになってから、だから、少し先にはなるだろーけど」
ニッと笑って、Lは云う。
それは、もちろん、僕にも異論はなかった。
ロリポリが怖いか怖くないかよりも、あの地下がどうなっているのかの方が、気になるに決まってる。
ふふんとNが鼻を鳴らして僕を見る。
何も云わなかったけれど、「やはり「キクタ」ですね」と、顔に書いてあるみたいだった。

「さて、とりあえずそんなところかなー」
Lがくるりとオレンジの海を見渡して云う。
「いやまあ、ほんとはもっと色々あんのは知ってるのよ?Kの体を取り戻すだけのはずが、何だか知らねーけど、あのふたりのラスボス候補のおかげで、「夏休み特別企画・1日隕石体験ツアー」みたいな事になっちゃってたからねー。でもさすがに疲れたしなー、今日のところはこの辺にしよーぜー」
隣に座るJを見て、正面の僕を見て、そして足の間にちょこんと座ったNを見下ろし、いつものようにふっふーと笑う。
あらためて、本当に僕も眠ってしまったんだなと思う。
どこか、他人事のようにも感じるのは、しばらく体を離れている事が続いていたせいかも知れない。
僕の意識はここにこうして存在して、オレンジの海で、LとJと向かい合ってる。
甘酸っぱい柑橘系の果物みたいな香りのする風が吹いて、やさしい雨が東屋の中にぱらぱらと吹き込んでいる。
Nの視界はセピア色の夕焼けに染まっていて、明日はきっと晴れそうだった。
視界の窓の反対側、はるかに遠い星の砂浜の地平線に、二重の太陽が沈みかけていて、白い砂浜が明るいオレンジ色に輝いている。
ふたつの夕焼けに照らされた僕の顔は、たぶん少し疲れてはいるのだろうけれど、晴れやかなはずだった。
何故なら、眼の前のJとLの顔が、とても晴れやかだったから。
願わくは
さっき、云いかけてやめていたNの言葉が、頭の中でふとよみがえっていた。
願わくは、ガブリエルも、そしてアイも、
晴れやかな顔で、あの夕焼けを眺めていますように。
心から、僕はそう願った。

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