stand by me iii

屋根裏ネコのゆううつ

地下への階段は15段ほどで踊り場に着き、左に180度折り返してまた15段ほど下った。
そこがまた踊り場になっていて、同じように向きを変えてさらに下へ15段ほど、下る。
もう一度同じことを繰り返して、そろそろ眼が回り始めたところで、ようやく鉄の階段は終わり、コンクリートの地面に着いた。
倉庫の奥から入り口方向に下る階段だったので、初めは海の方向へ、東に向かって下ったことになる。
くるくると回りながら降りたけれど、位置的にはそう変わらず、初めの倉庫の奥あたり、ほぼ真下へ降りたはずだった。
思った以上に、長い階段だった。深さでいえば、2フロア分くらい、階段の1段が20cmとしたら60段で12mは下っている、はず。
地下に灯りはなく、真っ暗だった。
でもNの視界と、Lが手にした懐中電灯の灯りのおかげで、周囲の様子は見えてる。
階段は右手側が壁になっていて、おそらく地上の倉庫の壁と同じ、白っぽいモルタルかコンクリートボードの壁だった。
階段が終わると正面も壁になっていた。眼の前の壁もおそらく階段の壁と同じ材質のものだろう。
そこで行き止まり、ではなく右側の壁に階段と同じ黒っぽい鉄の扉が付いていた。
つまり、進路は階段の下で90度右を向き、北へと続く鉄の扉の先、という事のようだった。
下まで降りたところで、Lが懐中電灯で周囲をくまなく照らすと、頭上にさっき降りて来た踊り場の床が見えた。踊り場も階段と同じ黒っぽい鉄製だった。
踊り場までの高さは2.5~3mほどだろうか。壁と階段と踊り場と鉄のドアが、規格の同じユニット式のセットなのかもしれない。軍の規格とか?そんなのがあるのかは知らないけれど。
ドアの上の壁に、蛍光灯らしき照明器具が付いているのが見えた。もちろん、灯りは点いていない。
階段下の右側の壁に、灯りのスイッチらしきものがあり、Lが何度か押してみたけれど反応はしなかった。
鉄のドアは重厚で窓もなく、表面に打ち付けられた無骨なリベットとその周囲には錆が浮き、まるで監獄か地下牢の扉を思わせた。
ドアにL字型のドアノブが付いている。
Lがペン型の懐中電灯を口に咥えて、空いた右手をドアノブにかけた。
ぐっと手に力を込めてノブを押し下げると、がちゃんと思いのほか大きな音がして、ドアが向こう側へ開く。
鍵はかかっていなかった。
そのままLがドアをぐっと押すと、わずかに軋みながら重々しくドアが開いて、眼の前に、思いもよらない広い空間が姿を現していた。
冷たい地下の空気が開け放たれたドアから流れ込んできて、涼しさを感じた。
「え、何これ・・・」
Lがそう云ったきり、言葉を失ってた。
僕も、隣に座るガブリエルとNも、そしてJも、声を出す事すらできず、ただ唖然として目の前の地下空間を見つめていた。
広い。
丸いドーム状の地下空間だった。
こちら側の壁から、対面の壁まで、10、いや15mはあるだろうか。
丸い天井の高さも、見上げるほどだった。おそらく7〜8mくらいはありそうに見える。
小学校の体育館の天井くらいの高さ、と云えばちょうどそれくらいかもしれない。
天井は丸くドーム型になっているので、中央が高く、周囲の壁際がそれよりもやや低いけれど、4~5mくらいはありそうだった。
天井の中心付近には太い鉄骨の梁が、縦横に2本ずつ、井桁型に張られていた。
梁からは、太い鉄の鎖や何かワイヤーのような物がいくつもぶら下がっているのが見えた。
Nの視界だから向こう側の壁や天井の梁まで見えているのかと思ったけれど、違った。
灯りが、点いていた。
天井と、壁面にもいくつか、蛍光灯らしき白い灯りがぼんやりと灯っている。
壁も床も、そして丸い天井も白っぽいコンクリート製だった。
円形の床の中心には、同心円をふた回りほど小さくしたくらいの大きさの、直径7〜8mほどの丸い鉄の土台のようなものが設置されていた。
床より10cmほど高さがあるように見える。回転する土台か、あるいは丸い台それ自体がリフトになっているのかもしれない。
工場か、何かの作業スペースのようにも見える広い空間だったけれど、他には特に何もなく、整然と片付いている、と云うより、閑散としている、と云ったほうがいいかもしれない。
中央の丸い鉄の土台から、左右の床に列車の線路のような鉄のレールが敷かれていた。
それぞれのレールの先は、この丸いホールから左右に伸びる通路へと続いている。
通路は、丸い天井のかまぼこ型の地下道で、そちらもかなり広い。
道幅は、おそらく7〜8mはあるだろうか。
2台の車が、バスやトラックでさえも余裕をもってすれ違えるくらい、一般的な二車線の車道くらいの広さがあった。
天井の高さも、ホールよりはやや低いけれどそれでも高く、おそらく4〜5mはありそうに見えた。
通路の床や壁、丸い天井もホールと同じ白っぽい灰色のコンクリートで固められていた。
通路の様子までしっかり見えているのは、あちらにもやはり壁面と天井の照明器具にまだ生きているものがあるらしい。
全体的に明るい、と云えるほどではなく、照明もおそらく本来設置されていたうちの半分以上は切れてしまっているのだろうけれど、それでも決して暗すぎるという事はなかった。懐中電灯なしでも十分に見える程度には明るかった。
クレーターの底の崩れかけた廃墟の地下にあったのは、何かの作業スペースのような広いホールと、そこから左右、つまり東西に伸びる広い地下道だった。
全くの予想外、という事はなかったかもしれないけれど、ことスケールの大きさは、僕の想像を遥かに超えてた。
信じられない思いで、僕らはただ無言のまま、身じろぎひとつできずに、しばらくそうして立ちすくんでいた。
地上から、クレーターの底までの深さが約5mくらいだった。
そこに建つ倉庫の床から地下へ階段で60段、約12mほど下へ降りたはず。
つまり現在の位置は、地表から深さ17mくらい、クレーターの底からだと地下12m、という事になるのだろう。
だとすれば、そこに天井まで高さ8mのホールがあるのも、同じく高さ5m・道幅が8mもある広い地下道があっても、計算上はおかしくはない事になる、けれど。
計算上はおかしくないからと云って、はいそうですねと眼の前にあるものをすんなり受け入れられる、というものではない、よね。
まるで、夢でも見ているような感覚だった。
それは、違和感、どころではなく、予想を遥かに超える規模感、だった。
「運び出そうとした、のか、あるいはすでに、実際に運び出した、のかも、だね」
まだ呆然としたまま、ぽつりとガブリエルがつぶやく。
運び出そうとした
あるいは、実際に運び出した
何を、とは聞くまでもない。
80年前、この場所に落ちた隕石を、なのだろう。
クレーターの直径が約50m、かける0.1で、隕石の直径はおよそ5m。
ガブリエルは、そう云ってた。
この地下ホールはまさに、その5mもある隕石を調査・回収するための作業スペース、だったのだろう。
そしてこの地下道ならば、その隕石をクレーンで吊り上げるかトレーラーに載せるかなどして、運び出すこともできたかもしれない。
いや、レールが敷かれているくらいだから、巨大なトロッコか、貨車のようなものに積んで運んだのかも。
そのための、広い地下施設。
だとすると、この地下道の向かう先は、海?なのだろうか。
Lの云うような、輸送船がそのまま直に接岸できるようなドックとか、そんなものがこの近くの海沿いのどこかに隠されていて、この地下道はそこへ通じているのかな。
「諸々いくつか疑問は残るけど、この広さの理由はおそらくそれで間違いねーだろーなー」
Lが、まだ驚いた顔のままで、そう云った。
さっきのガブリエルの声は聞こえていないはずだけれど、後半の僕の心の声と、何よりLも同じように考えていた、という事かな。
諸々いくつかの疑問、と云うのは。
「ん、諸々?まあ細かい点がね。例えば、このレールの先に予想通りのドックか何かがあって、そこまで隕石を運んだのだとしたら、まずクレーターの底からこの場所まで隕石を降ろしたって事になるよね。いやまあ隕石自体は、もしかしたら最初からここに埋まってたのかもしれねーけど。落ちて来た時点でね。でもさっき見た限りじゃ、クレーターの中にそんな大きな穴は開いてなかった。降ろしたにしろ埋まってたにしろ、穴はどうした?って疑問がひとつね。まあ、例の宇宙開発競争のアレで、この地下道と設備を作る過程で、上の穴は塞いだのかもしれないけどなー。宇宙から見られないようにねー。それと、電気。パッと見た感じ、切れてる電灯も多そうだけど、範囲でいえば見える場所ほぼ全部の灯りが点いてる。となると、電気がいまだに供給されてるってことになるよね。なんでかはわかんねーけど」
地上の穴と、電気。
確かに云われてみれば、どちらも疑問だった。
「まあ、人の気配も最近まで作業してたような様子もないから、常時灯りが点いてるわけじゃなく、ご親切に、あいつが点けてくれたのかもだけどなー。それにしても、放置されてたように見える施設なのに、今でも灯りが点く、ってのが、不思議だよね」
Lの云う通り、この地下ホールには人の気配も、誰かが最近まで出入りしていたような様子も見えない。
どちらかと云えば、すでにだいぶ以前に、きれいさっぱり引き上げた後、みたいに見える。
けれど、
「うん、まずはこの地下道がどこまで続いてるのか確かめるか。どこか途中に、発電のための施設がまだあって動いてるのかもしれないしなー」
うなずいて、Lはいつもの笑顔になり、左右の道をきょろきょろと見比べ始めながら、
「その前に、あいつはその辺にいないのかね」
そう云って、足元のラファエルを見て、すぐ後ろにいたNをちらっと振り返る。
ラファエルは、Lの顔を見て小首をかしげ、足元の地面のにおいをくんくん嗅いでいたけれど、何も怪しいものはなかったのか、無反応だった。
Nは少し顔を上に向けるようにして、ぴりぴりと髭を振るわせてから、
「はい、付近に気配はないようです」
そう云って、Lにうなずいて見せる。
Nの声はLに聞こえないので、僕が代わりにそう伝えた。
左右に伸びる地下道は、いったいどこまで続いてるのだろう。
灯りがついているとは云え広さのわりに光量が少ないので、先の方は暗く、はっきりとは見えない。
けれど、見える範囲で云っても、左右ともかなり奥まで続いているようだった。
「クロちゃんが、ここなら飛べるって。ちょっとその辺をくるっと回って見てくるよ」
Jがそう云うと、Lはニッと笑って
「おお、じゃあ頼むわ。いくぜー、せーの」
クロちゃんを乗せた左腕を、前へ振り出すように勢いよく上げた。
腕の動きに合わせるようにクロちゃんがLの腕を離しながら軽く蹴って羽ばたきをし、そのままふわりと舞い上がる。
鷹匠、っぽくはなかったけれど、なかなかかっこいい。
クロちゃんは天井の高いホールの真ん中あたりまで飛び上がり、そこで一度左へ旋回してから大きく弧を描くように、床に敷かれたレールに沿って右の通路へと飛んで行く。
壁の蛍光灯にぼんやりと照らし出された、薄暗い地下道を滑空していくクロちゃんを見送りながら、Lがホールの真ん中へ進み、丸い鉄の土台の縁で立ち止まって
「左はほぼまっすぐ、右はすぐそこで北向きに曲がってるねー。海があるとしたら右なんだろーけど、なんで北向きなのかなー?北って、地上は何か崖みたいになってたよなー」
ひとりごとのようにそう云った。
Lの云う通り、ホールから左右に伸びる地下道は、左はまっすぐ西の方角へ、右は少し先からゆるやかに左へ、つまり北向きにカーブしているようだった。
クレーターの北側には、斜面の上から見渡した限りでは、灰色の岩肌の断層のような崖がそびえているのが見えていた、はず。
北側すぐの場所ではなく、おそらく南側と同じ何もない平地の少し向こう、50mくらい先、のように見えた、気がする。
とは云っても、僕らがそれを見たのはクレーターの南側の斜面の天辺から、なのだ。
間に直径50mほどのクレーターがあり、その向こうにはこちら側とほぼ同じ高さの斜面があったので、斜面のさらに向こう側がどうなっているのかは、ほとんど見えなかった。
北側の断層のような崖は、斜面よりも高かったのでその向こうに見えていた、というだけで、その崖までの正確な距離ははっきりとはわからない。
実はクレーターの北側すぐのところにあるのかもしれないし、逆にもっと遠く離れているのかもしれない。
とはいえ、斜面の向こうに崖の岩肌が見えてはいたので、数百メートルも向こう、という事はないだろうけれど。
「む、行き止まりだね」
「オレンジの海」から、Jの声が云う。
右の通路へ向かったクロちゃんの姿は、僕らのいるホールからはもう見えない。
「土砂崩れ?なのかなあ。地下道が塞がれちゃってるよー」
Lがこちらを見て、ひとつうなずくと、ホールから右の地下道へ向かって小走りに駆け出した。
ラファエルと、Nもすぐに続く。
土砂崩れ?
と聞いてすぐに思いつくのは、12年前の地震、だった。
そう考えて、あらためて思った。
クレーターも、あの倉庫の廃墟も、その地震と津波を耐えて、あの形で残っているのだ。
むしろ、その方がすごい事なのかもしれない。
「うん、この地下道とホールもだなー。よく見ると、コンクリートにひび割れが入ってるとこ、あるね。しかもわりとあちこちに」
小走りに駆けながら辺りを見回して、Lが云う。
その通りだった。
天井や壁にはあちこちにひび割れが見え、ところどころ、かなり大きな亀裂が走っているのも見えた。
壁と天井の灯りも、やっぱり半分以上は切れてしまっているようだった。
灯りは初めから間隔をあけて設置されていたわけではなく、大半が切れてしまっていて、かろうじてまだ点くものがまばらに残っている、という事なのだろう。
だとしても、蛍光灯の寿命がそんなに長いものなのかな。
「いやあ、80年は絶対無理だねー。普通の蛍光灯はせいぜい2~3年くらいのはず。LEDなら長寿命って云われてるけど、それでもまあ周辺の器具も含めたらもって10年くらいじゃないかなー」
蛍光灯は2~3年
LEDでも10年?
どういうことだろう。じゃあ何故いまだに灯りが点いているの。
「少なくとも、地震の頃までは、まだ誰かがここにいた、ってことじゃね」
Lが当然のようにそう云って、まあそうなるよね、と納得しかけて、頭が混乱した。
ちょっと待って、隕石が落ちたのは80年前だよね。
この地下道が作られたのも、おそらくその直後なので同じ時期のはず。
地震が起こったのは12年前、だった。
つまり地震が起きる前にもまだ、この地下施設に人がいたの、80年前から、ずっと?
そして、地震の後にも?
「あの灯りがLEDなのだとしても、地震と同じ頃かその後に交換されたものがまだ点いてることになるし、もし蛍光灯なのだとしたら、少なくとも2年以内に誰かが交換した、そういう事になるね」
ガブリエルが冷静にそう云ったけれど、横を見ると、信じられないと云う顔で僕を見て困ったように苦笑してた。
「まあ、ずっといた、とは限らねーけどなー。もうとっくの昔に誰もいなくなってて、地震が起きたから、点検のために見に来たとか。あるいは地震の後だけじゃなく、最近にも誰かが見にきたとかね。そいつが暗くて不便だったから蛍光灯を交換したのかも、じゃね」
Lがそう云ってくれて、少し、安心というか、頭の混乱は収まった。
そう、かもしれない。隕石を回収したにしろ、まだしていないにしろ、ここに施設がある事には変わりがない。
これだけしっかりした、立派な施設なのだ。隕石を運び出すためだけに使って、放棄してしまうのはもったいない気がする。何か別の研究のための施設とか、再利用を考えていたとしても、それはとても自然に思える。
それに、何年も前にすでに撤収していたとしても、地震が起きたら崩れていないか、周辺に被害を出していないか、確認にも来るだろう。その確認のために、灯りが点くように蛍光灯を交換する事は、何もおかしな事ではないように思える。
ゆるいカーブを描いて左へ曲がっている地下道を曲がり終える途中で、唐突に目の前が塞がれていた。
Jの云う通り、崩れた土砂で地下道は埋もれてしまってた。
周囲の灯りも切れてしまっているらしく、通路の先は暗かった。
Lが懐中電灯を向けると、天井だけでなく左右の壁も崩れ、完全に塞がれてしまった地下道が光の中に浮かび上がる。
やっぱり誰かが、点検のために来ていたのだろう。
崩れた天井の手前に、支えるように仮設の鉄骨が組まれていた。
左右の壁も同様に、破損や崩落が広がらないよう鉄骨を組んで応急処置がされているようだった。
「うーん、ざんねーん」
沈黙を破るのは、いつもの陽気なLの声だ。
「隕石を運び出せるような何かでっかいトロッコとかクレーンとか、あと、この地下道の先には大型の輸送船が入れるような秘密のドックとか、絶対あると思ったんだけどねー」
Lは悔しそうに口を尖らせて、石を蹴るようなそぶりで何もない空間を蹴っている。
確かに、これだけの規模の地下道があるのだから、Lの云うような施設がこの先にあったとしても、不思議ではない。
けれど、完全に崩れ落ちてしまった地下道には、潜り込めるような隙間もなく、仮にそんなものがあったとして、とても入れるものではない事は、誰よりもLがよくわかっているのだろう。
だからこそ、こんなにも悔しそうなんだよね。
それは、僕も一緒だった。
「ただまあ、道が途絶えたわけじゃねーぜ。次は、西へ行ってみよー。ほら、いつまでもここにいるのもね、また崩れたら危ないし」
そう云って、Lが左腕をまっすぐ横に伸ばして上げる。
周囲を確認しながら頭上をゆっくり旋回していたクロちゃんが、減速しながら降りてきて、Lの腕につかまって止まった。
「おお」
できると思っていなかったのか、Lは驚いたような顔をしてから、すぐにうれしそうな笑顔を浮かべる。
「いやあ、もっとガシッと来るのかと思ったら、クロちゃん、あなたなかなかやるわねー」
カラスがすごいのか、それともクロちゃんが特別なのか、両方かもしれない。
元々カラスはとても賢い鳥だとよく聞く。
その上、クロちゃんは人の意識との付き合いもあるベテランなのだから。
「次は西だね?じゃあ、また先に見に行ってみるよ」
クロちゃんをLに褒められたのがうれしかったのかな、Jがご機嫌で云う。
「おー、頼むぜー。せーの」
そう掛け声をかけながら、Lが大きく左腕を斜め上に振る。
絶妙のタイミングで羽ばたいて、クロちゃんがすっと飛び立ち、そのまま元来た地下道をホールの方へ戻っていく。
僕らもレールに沿って、まばらな蛍光灯にぼんやりと照らされた薄暗い地下道を戻った。
先程の広いホールまで戻ったあたりで、
「いたよ、あの子」
Jの少し緊張した声が、「オレンジの海」から響いた。
「西側の通路の先。これは、なんて云うんだろう。大きなドア?みたいな所の前に立ってる」
大きなドア
その詳細な情報が届くよりも早く、僕らは地下道を駆け出していた。
西側の地下道も、東側とほとんど同じ作りだった。
天井の丸いかまぼこ型の通路で、道幅も天井までの高さもほぼ一緒だった。
少し走ると、Jの云う「大きなドア」が目の前に見えてきた。
ホールから、まっすぐに東へ進んだ先で、地下道はそのドアに行く手を阻まれていた。
ドアと云うよりも、ハッチだろうか。いや、扉、には違いないはずなので、ドアでも間違いではないのだろうけれども。
大きな扉だった。
旅客機の扉というか、宇宙船の扉、あるいは、核シェルターの扉のようにも見えた。
近づいてみると、通路の正面はコンクリートの壁で塞がれていて、床に敷かれたレールも、その手前で終わっていた。
そのコンクリートの壁の真ん中に、巨大な丸い鉄の扉があった。
床から30cmほどの高さにある、直径4mほどの丸い鉄の扉だった。
見るからに重厚で、ロケット砲や核爆発にでも耐えられそうな見た目をしてる。
扉の左右に、デッドボルト、と云うのかな、太さ30cmくらいはありそうな鋼鉄のかんぬきが3本ずつ、計6本、何層にも重なった扉の丸い円に突き刺さるように止められている。
何があろうと、絶対にこの扉は開けない、という意思のようなものが強く感じられる、見るからに頑丈そうな扉だった。
「うわー、すごいの出てきたなー」
扉に向かって走りながら、いつでも楽しそうなLが、いつもよりさらに楽しそうに云う。
巨大な扉に目を奪われて、「キクタ」が目に入っていなかった。
数十mの距離まで近づくと、ドアの左側、正面のコンクリートの壁際に、こちら向きにぽつんと立っているのがようやくわかった。
半ズボンにデニムシャツ、ぶかぶかの大きなヘッドホンを頭に被り、昆虫のようなゴーグルを顔に付けている。
ゴーグルのせいで眼の表情は見えないけれど、口元には、相変わらず微笑を浮かべている。
あそこで、ずっと僕らを待っていた、という事なのかな。
僕らの姿を確認すると、「キクタ」はくるりと後ろを向いた。
正面の扉の左横のコンクリートの壁面に、何かパネルかキーパッドのようなものが付いているのが見えた。
「キクタ」が手を伸ばして、そのパネルを指で叩く。
指がキーを叩くたびに、ピッピッピッ、と甲高い電子音が、静まり返った広い地下道に響いた。
コンクリートの床を駆ける僕らの足音と、パネルキーの電子音だけが聞こえている。
15回以上、キーを叩いただろうか。パスワードなのだとしたら、ずいぶん厳重だなと思った。
最後のキーを叩いたらしい、ピーッと長く電子音が鳴って、壁のパネルの上部に設置された、赤いランプが点灯する。パトカーや消防車に付いてるような、くるくる回る赤いランプ。警告灯、かな。
ビーッビーッ、と連続するブザーのような大きな警告音が鳴り響いて、赤いランプがくるくる回る。
次いで低く地鳴りのような音がした。
足元の地面が、震えているように感じたけれど、地震ではなかった。
ごん、という何かを叩くような音が丸い扉から聞こえ、お腹に響くような低い音が重なって鳴る。
鋼鉄の太いかんぬきのロックが解除されたらしい。
油圧式のようなゆっくりとした滑らかな動きで、6本のかんぬきが右側のものは右へ、左側のものは左へと扉から抜けて、外側のコンクリートの壁の中に吸い込まれて行く。
ごおん、と一際大きな音が響いて、丸い扉が上を支点にして手前に開き始めた。
警告のブザーと赤ランプは、開く扉に人が巻き込まれないようにするため、なのかも。
「!!!」
Lが、何やら歓喜の声を上げている。
何と云ったのか、言葉は聞き取れなかったけれど、大興奮なのは顔を見れば一目瞭然だ。
扉は、水平よりも少し上まで、角度でいえば100度くらいまでゆっくりと上に開いて、止まった。
ブザーも鳴り止んだけれど、赤いランプだけはまだ点いたまま、くるくる回り続けてる。
開いた扉は、見上げると分厚い蓋か、大きなひさしか軒のようにも見えた。
「キクタ」がこちらを振り返り、笑みを浮かべたまま、また僕らに手招きをする。
そしてくるりと向こうを向くと、開いた扉をくぐって、向こう側へと小走りに姿を消した。
これこそ、まさに罠、なのでは。
とっさに、そう思った。
Nがすぐに反応して、扉の手前、10mほどのところでぴたりと足を止める。
Lにも聞こえていたらしい。
歓喜の笑顔を浮かべたまま足を止めて、すぐに不満そうな顔になってこちらをじっと見る。
ラファエルもLの横で止まってた。
「K、「音」は?」
Jの声がして、クロちゃんもLの横の地面に降りて来た。
僕の頭の中の「音」は、変化なしだった。
ぴりぴりという、パルス音が遠くの空から聞こえてる。
「じゃあなんで止めるの」
Lの不満げな顔というのも珍しい。もしかしたら、初めて見たかも。
それはともかく、
止まった理由は、罠かもしれないと感じたから、ただそれだけだった。
そう、説明し始めた時、再びブザーが鳴り響いて、扉が低い音を立てて動き始める。
開いた時と同じように、ゆっくりと閉まり始めていた。
「おい待て、閉まっちゃうじゃん」
Lが悲鳴のような大声を上げる。
閉まってしまえば、もう一度開くことは、僕らにはできない。
もしかしたら、「キクタ」が中から開けてくれる、かもしれないけれど。
一瞬、迷った。
扉をくぐって中へ進むべきか。
それともここで追跡を諦めるべきか。
僕らに扉を開けることができないのは、中へ入ったとしても一緒だった。
「キクタ」を追い詰めて、僕の体を取り戻せたとして、帰りはどうするの?
扉は、開けられない。
二度と戻れないかもしれない場所へ、このままみんなを進ませるの。
それは本当に正しいことなのだろうか。
1秒、2秒、3秒、僕は固まっていた。
不吉な赤いランプがくるくると回り、大音量のブザーが、迷う僕を急き立てるように鳴り響いてる。
その時、
「行こう。行かなければ、何もわからないままだ」
凛とした声が、そう云った。
晴れた夏空のように爽やかなガブリエルの青い眼が、まっすぐに僕を見つめてる。
迷いのない力強い声と、立ちすくむ僕の背を、そっと支えるような、あたたかく、やさしい眼だった。
行かなければ、何もわからない
その言葉に、確かに勇気をもらってた。
僕は顔を上げ、声に出して
「行こう」
と云った。
「承知しました」
答えるよりも早く、Nが地面を蹴って駆け出していた。
「っしゃー!行こうぜー」
陽気なハスキーボイスが弾んで、Lも走り出す。
ラファエルもすぐに続き、クロちゃんも羽ばたいて飛び上がる。
「わたし、Kの「ぴこぴこ」信じてるから」
Jが心の声で云って、「ふふふ」と魔法の声で笑う。
扉は、もう水平よりも低く下がって来ていた。
けれど、扉の開口部はもう眼の前だった。
全員で、丸い穴に飛び込んで、背中で、ごおん、という扉の閉まる大きな低い音を聞いた。
ブザーが鳴り止み、赤いランプの光ももう見えない。
残響が、地下道全体をしばらく震わせているようだった。

誰からともなくそこで足を止めてた。
無事に扉をくぐり抜け、数歩進んだ辺り、だった。
急に辺りの様子が変わり、圧迫感というのだろうか、空気に厚みや重みが加わったような気がした。
扉の先にあったのも、さっきまでと同様に地下道だったけれど、狭くなっていた。
狭く、とは云っても、あくまで先ほどまでの広い地下道と比較しての事だ。
道幅も天井までの高さも4mほどはあったから、決して狭くはないはずだけれど、扉をくぐった途端に半分のサイズになってしまったので、狭くなった、と感じたのだろう。
4m
背後で閉じた、あの鋼鉄の分厚い扉の直径と、ほぼ同じサイズの丸い地下道だった。
あの工事現場のマンホールの下の、直径2mほどの丸い地下道をそのまま倍ほど大きくしたようなイメージ、だろうか。
そう考えると、やはり狭くはなく、むしろ広い地下道、なのだと思う。
先ほどまでのあれが巨大すぎるだけだ。
あのマンホール下の地下道と違うのは、大きさと、こちらは壁も天井も床も全てコンクリート製という所だった。
空気が重くなったような圧迫感を感じるのは、急に空間が狭まったため、なのかもしれない。
あくまで、扉の手前のあの巨大な地下道と比較して、なので、決して狭すぎるとか息苦しさを感じるとかいうほどの事ではなかったけれど。
切れずに生き残っている電灯が少ないのか、こちらはかなり暗かった。
少し先に灯りはあるらしく、ぼんやりとした光が届いているので、周囲が見えないほど暗いわけではないけれど。
Nの視界のおかげもあって、薄暗くても僕にはほとんど普段通りに見えていた。
Lは、さすがに見えづらかったらしく、消していた右手の懐中電灯を再び点灯してた。
「あいつ」は、またひとりで先に進んでいるらしい。
見える範囲には、彼の姿はなかった。
「まーったく、おまえって子は」
ひと通り周囲を懐中電灯で照らして確認してから、LがNを見下ろして苦笑いを浮かべる。
Nに、ではなく、もちろん僕に云っているのだろう。
「でもまあ、みんなの事を思ってとっさに止めたんだろーし、その後の「行こう」って判断も早かったから、結果オーライだけどなー」
左腕を伸ばして、地面に降りていたクロちゃんをまた腕に止まらせながら、そう云ってLはいつもの陽気な笑顔になる。
結果オーライ、なのかな。
確かにとっさに迷って足を止め、ガブリエルの言葉で「行こう」と決めて、すぐにそう云った。
その事に後悔はなかったけれど、正直に云うと自信もなかった。
「自信?あー、扉が開けれないとか何とか云ってたあれか?いや、開けれるだろ、さっきあいつが押してたパスコード、オレ見えてたし」
何でもない事のように、さらりとLは云う。
開けれるだろ
オレ見えてたし?
いやいや、確かに距離と角度的にLからは「あいつ」の手元が「見えてた」かもしれないけれど、まさかあの十何桁のパスを一目で覚えたの、あの一瞬で?
「16桁なー。覚えられるだろ、円周率とかじゃあるまいし。7234567772345670、かな。最後がちょい微妙だけど。0か#か指がじゃまでよく見えなかったからなー。あと、妙に7が多いなって、まあそれはどーでもいいか」
いつもの陽気な笑顔で、さも当たり前のようにLは云うけれど。
え、もしかして天才美少女なの。
「だからおまえ、なんでそういうの面と向かって云うの?ばかなの」
Lは、腕にクロちゃんを乗せたまま、ぷいっと後ろを向いて丸い鋼鉄の扉に向かって歩き出す。
まあ、照れているのだろう。
でも、アイではないけれど、本当に思ってしまったのだ。「天才ってすげえ」って。
丸い扉は、こちら側から見ても重厚だった。
表側にあった太い6本のかんぬきは、こちら側は左右2本ずつの4本だった。
Lは、扉の周りをぐるりと懐中電灯で照らして、お目当てのパネルを見つけたらしい。
右側の壁に近づいて行く。
右手の壁に、向こう側にあったのと同じ、キーパッドが嵌め込まれていた。
薄い樹脂製のカバーを上に跳ね上げて、Lが手慣れた動作でキーを叩いていく。
ピッピッ、が計15回、最後の16回目はピーッと長く鳴って、また警告のブザーと地鳴りのような音が響いた。
パネルの上の壁で、赤いランプがくるくる回って光るのも、向こう側と同じだ。
「おー」
Jが歓声を上げて、かんぬきが壁に吸い込まれるように外れ、扉が先ほどと同じように向こう側へ開いていく。
「最後は0で合ってたわ。まあ、これで帰りの心配もなくなったねー」
ふふーん、とLはいつものように笑っている。
あの時、僕はただただ、巨大な扉に圧倒されてた。
「あいつ」がパネルを操作して、キーを叩いていたのは確かに見えていたけれど、どのキーをどんな順番で打ったのか、しかもそれをそのまま見て覚えるなんて、僕は、微塵も思いもしなかった。
「いやいや、そう云うけどね、K。あいつ、あえて見せてたよね。パネルに体が被らないように避けて、わざわざ手を伸ばしてさー。何かこう、やる事がいちいち挑戦的じゃね?「おまえら、これ、ちゃんと覚えろよ?」みたいなさー。ほんとかわいくねーやつ」
そう、だったかな。
云われてみれば、そんな気もするけれど。
でもLにそう云われなければ、僕はそのまま、あいつの意図には気づく事なく「扉はもう開けられない」と思い込んでたかもしれない。
つまり、やっぱりLは、すごい。
「そうかな?教えてくれてたんだとしたら、意外といい子、なのかも?」
Lの「かわいくねーやつ」に対して、Jはあくまで「意外といい子」かもしれない説、だった。
僕は、どうだろう。
さっきは、罠かもしれないって、とっさに思ってた。
それは、あの「キクタ」個人に対してどうこうと云うよりも、状況に対して反射的にそう思った、という方が近い気がする。
力ずくではどうにもならない巨大な鋼鉄の扉と、十数桁もあるパスキーでしか開けられないその仕組みに対して、罠かもと思った。
罠かもしれない可能性、そこに、あの「キクタ」はいなかった。
何故だろう。
あの「キクタ」が、僕らを罠に嵌める理由が、僕には思いつかないから、だろうか。
あの「キクタ」からは、悪意が感じられないから?敵意も、もちろん殺意も。
ヌガノマから感じた、どろどろと渦を巻くような様々な暗い感情が、あいつからは一切感じられない。
見た目の印象も、もちろんあるだろうとは思う。
半ズボンにデニムシャツの小学生だから、敵だとは思えない、のかな。
いやそれでも、あいつは僕の「体」を奪った「敵」だ。
いくらそう思おうとしても、あの見た目でいつでも微笑みを浮かべられていたら、そう「認識」できなくなってしまうのかもしれない。
あるいはそれすらもあいつの手口で、あえてそう「認識」させなくしている、のかもしれないけれど。
何かもっと深い、僕らの気づかないところにある、あいつの目的のために?
その目的のために、あいつは僕らを招いている、のだろうか。
でも、もしそうなのだとしても、
「行かなければ、何もわからないままだ」
凛としたガブリエルの声が、今も僕の耳に残っている。
何もわからないまま
あいつの目的も、隕石やこの施設の謎も、もしかしたら、他にも。
「うん、責任重大だね。これでもし罠だったりしたら、ボクはもう一生みんなに許してもらえないかも」
ガブリエルが、冗談めかして云う。
表情はいつものやさしげな笑顔だったけれど、たぶん本気でそう思っているのだろう、と僕は感じた。
だから、
「だいじょうぶ」
心の声でガブリエルに僕は云う。
もしも罠だったとしても、「行こう」と云ったのは僕なのだから。
それが罪になるのだとしたら、僕もガブリエルと同罪だった。
だいじょうぶ、というのは、答えにも慰めにもなっていなかったかもしれないけれど。
扉は、先ほどと同じように上を支点にして100度くらいの角度まで、向こう側で上に開いて止まった。
おそらく、そういう仕様か設定なのだろう。
扉の厚みや重み、構造的にもそれが最大の開く角度なのかもしれない。
そのまま1分ほど静止した後、扉はまた開いた時と同じようにゆっくりと閉まり始めた。
あの時、中からあいつが何か操作をして、僕らを誘い込むためにあえて扉を閉め始めた、というわけではなかったらしい。
まあ、それも今ふと思いついただけの妄想で、さっき閉まり始めた時にはそんな事は思いもしなかったのだけれど。
「とりあえずとっ捕まえて、あいつに直接聞いてみりゃわかるよなー。かわいくねーやつなのか、意外といい子なのか、それとも「敵」なのか」
パネルのカバーを元通りに閉じて、こちらへ戻って来ながらLはそう云った。
いつも通りの、楽しそうな笑顔で。
僕は、無意識の願望なのか、希望的観測というやつなのか、それとも「認識」のせいなのか、わからないけれど、「敵」という線は、ないような気がしていた。
云い方からして、Lもおそらく、そう考えているように思えた。
Jは、公園に現れたあいつと会った時から、一貫してフレンドリーな印象というか、対話すら可能な友好的なイメージを持っている気がする。
ガブリエルは、どうなのだろう。
隣を見ると、
「え、ボク?」
ガブリエルは、困ったような苦笑いを見せる。
「ボクも概ね、キミと同じかなあ。今の時点では「敵」じゃないような気がしてるけど、それは、キミの云うように、そうだったらいいなあという無意識の願望なのかもしれない」
少し考え込むように、ガブリエルはあごに親指を当てて、人差し指の関節で下唇を押し上げるようにして、
「ひとつあるとしたら、キミとボクは、ヌガノマを知ってるからねえ。縛られて誘拐されたり、追いかけられたり首絞められたり、直接的にね。ミカエルもキミを助けに来た時に会ってるけど、あの時あの子はラファエルだったし、不意打ちで一方的に引き摺り倒しただけで、あいつに何かされたわけじゃない。だから、キミとボクは、「敵」じゃないと思いたくても、心の底からそうは思えないのかもしれないね。あるいはもっと云えば、ヌガノマが本当は怖いやつじゃなくて、実はいいやつだったらいいな、っていう願望みたいなのがどこかにあるのかもしれないねえ」
そう云って、困ったような苦笑を浮かべたままだった。
ヌガノマは「敵」じゃない、
確かにそうは思えない。
思いたくないわけではなく、思えない。
でも、それとはまた別に、
本当は怖いやつなんかじゃなくて、実はいいやつだったらいいなと思う、
それは僕もそうかもしれない。
今、ガブリエルに云われてみて初めて気づいたけれど、僕も心のどこかでは、ずっとそう思っていたのかもしれない。
「まあ、うちの天才お姉様の云う通り、捕まえて聞いてみればわかる、よね」
そう云ってガブリエルはあごから指を離して、いつものようにやさしげな笑みを浮かべた。
「ほんじゃまあ、冒険を続けよーぜー」
元気にそう云って、懐中電灯の光を前に向け、Lは地下道を西へ向かって歩き出した。
ラファエルがすぐ右横に並び、Nは左に並んで進む。
薄暗い地下道は、ほぼまっすぐに西へ向かっているけれど、その先は真っ暗な暗闇に沈んでいて、そこに何があるのかはまだ見えなかった。





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