波打ち際の夢を見た。
それが夢だとは、すぐにわかった。
以前にも、僕はこの夢を見たことがあったから。
Jが眠りにつく直前に、あの砂浜で、僕はこのオレンジ色の海を見た。
あの浜にある実際の海ではなく、不思議なオレンジ色の空とつながる、白昼夢の海。
空には太陽がふたつあって、とても明るく晴れているのに、あたたかい雨がしとしとと降り注いでいた。
僕は足首まで水に浸かっていて、ゆるやかに波が打ち寄せるたびに、心地良い冷たさがはだしの足をくすぐって通り過ぎる。
ゆったりと低く鳴り響く波音と、耳元で軽やかに鳴る雨音以外には、何の物音も聞こえない、静かなオレンジの海。
白い砂浜はまるで巨大な蛇のように、ゆるゆると大きく蛇行しながらどこまでもはてしなく続いている。
細かくて手触りの良さそうな白い砂は、そのひとつひとつが星のかけらのようにきらきらときらめいていた。
一点の曇りもない真っ白な星の砂浜に、ぽつんと黒い影があった。
僕の右手側、砂浜が海側へ大きく蛇行しているその弧のちょうど真ん中あたりに、ひとつ。
その場所から少し海とは反対側の、砂浜が弓のようにゆるく盛り上がった小さな丘のその頂上辺りに、ひとつ。
遠すぎて姿かたちまでははっきりわからない、小さな黒い点。
それは、ふたつの人影、だろうか。
あるいは、黒い鳥か、動物の影、かもしれない。
その影たちのいる場所へ、僕も行ってみたいと思い、波打ち際を歩き出す。
けれど、いくら歩いてみても、距離は縮まらなかった。
黒いふたつの点は、ずっと同じ場所にあって、歩いても歩いても、近づけない。
見える景色は、少しも変わらなかった。
なぜか不思議な懐かしさを感じる、おだやかで優しい風景。
でも僕の心には、焦りと不安がじわじわと広がり始める。
波を蹴って、足を進める。
進めども小さいままの黒い点が、僕の焦りをあおる。
冷たい水の弾ける音が、僕の不安をかき立てる。
もうほとんど、走っているくらいなのに、少しもふたつの影に近づけない。
僕の中で、みるみる大きくなった焦りと不安が、ついにあふれ出しそうになった、その時、
「だいじょうぶ」
耳のすぐそばで、Jのやわらかな声が聞こえた。
「キミは、ちゃあんと、前に進んでるよ、K」
ころころと軽やかに転がる鈴の音のような、少しハスキーがかった高い声が、僕の耳たぶをそっとなでて、ふわりと僕の全身を包み込んだ。
その瞬間、焦りも不安も泡のように弾けて、消えていた。
火曜日、昼過ぎに、アイが僕の家にやってきた。
僕が玄関のドアを開けると、「行こうぜ」とアイは道路の向こうの工事現場の塀を親指で指さしながら、挑むような顔で云った。
やる気満々なのは結構なのだけれど。
「その前に、ちょっと話があるんだ。入って」
僕はアイを手招きして、家へ上がらせた。
リビングに通して座らせ、冷蔵庫から冷たい麦茶を出してふたつのグラスに注いで運び、僕もソファに座る。
昨夜の、父と母に起こった現象について、アイにも話しておくべきだと思った。
だから、話した。
ナガタ先生とアイにも以前同じ現象が起きているのだけれど、ややこしくなりそうなのでそちらは話さなかった。
「なんだよ、そりゃあ」
話しを聞き終えたアイの第一声は、僕の予想通りだった。
まあ、そう云うだろうなと思ってた。
ただ、その後の反応は、予想と違っていた。
また何かの陰謀論てきな事を云い出すか、あるいは、それより早く行こうぜと立ち上がるか、どちらかだろうと思っていたのだけれど。
アイは腕組みをしたまま、眼を閉じて何か考え込んでいる様子だった。
静まり返ったリビングに、壁の時計の秒針の刻む音だけがしばらく響いていた。
「あのな、へんな話するぞ」
眼を開けたアイは、腕組みしたまま僕にそう云った。
僕がした昨夜の父と母の話だって、十分へんな話の部類に入ると思う。
にわかには、信じがたい話だろう。
「うん」
僕はうなずいて、話を聞く態勢になった。
「どう云えばいいのかわかんねえから、ごちゃごちゃになるかもしれねえけど」
そう、アイは前置きをして、
「俺、昨日、おまえに云われた公園へ行ってみたんだ、家に帰る前にさ。公園の入り口まで行って、中をのぞき込んで、やっぱり昨日云った通り、そこに公園があるのは前から知ってたけど、俺は入ったことねえなって、そのことを確かめて。それで、なんとなく公園の生垣のまわりをぐるっと回ってみたんだ。そしたら、裏側の、竹林の横の、生垣が途切れた、裏口みてえな小道のところで、ふと、おまえの声を聞いた覚えがあるような気がして」
ごくり、とアイがつばを飲み込む音が聞こえた。
裏側の生垣が途切れた小道、まさにそこだった。
アイと仲間の刈り上げの少年は、そこにいて、僕はあの時、公園の中から・・・、
「おまえが「帰って」って俺に云ってさ、ジーンと手をつないで、公園の中に立ってて。その場面だけが、急に頭に浮かんだ。他は何も覚えてねえんだ。覚えてねえ?いや、その場面だって、覚えてたわけじゃねえ。昨日、おまえに公園のこと聞いても、そんなの思い出さなかった。実際にあの小道に立つまで、ぜんぜん記憶になかったんだ。だから、昨日は妄想だと思った。おまえに公園の話を聞いたから、俺が勝手に頭の中で、そんな場面を想像したのかもってな。でも、昨夜のその、おまえの親父さんの話、俺も同じなんじゃねえか?俺も、あそこで、何か触れちゃだめなもんに触れて、記憶が飛んでるんじゃねえのかな?」
あの公園。触れてはいけない何か。
ミドノ原の父と母の記憶。思い出してはいけない何か。
あの「現象」は、やはり僕が無意識に起こしていたわけではないのか。
場所にまつわる何かの「力」なのだろうか。
では、あの職員室は?
いや、一旦あの職員室は忘れよう。
今は「公園」と「ミドノ原」だ。
公園で、ずっと気になっていることがひとつあった。
アイと仲間の刈り上げの少年が、あの公園に一歩も入れなかったこと。
あれもひとつの「力」なのでは。
アイとあの少年の無意識に作用する「力」。
防御機構。
あの時、僕が何かをしたのではなく、アイが公園へ入ろうとしたのだとしたら。
それが防御機構を作動させて、あの「現象」が起こった。
それなら、アイの云う通り、昨夜の父と同じ事が起こった、と云えるのでは。
「そうなのかも」
とだけ、僕は答えた。
それしか云えなかった、のが正解だけれど。
じゃあ、僕とJはどうして公園に入れるのだろう。
それに、あの時、祖母も。
「めったに人のいない公園から楽しそうな声がするから、ちょいとのぞいてみたら、うちの子だったよ」
Jと初めて会ったあの日、そう云いながら、祖母は公園の入り口から、電車ブランコの前まで入って来ていた。
それにあの日、ベンチでうたた寝していたおじいさんもいた。
それから、Lもだ。
「ちょっとそこの公園までつき合え」とJのランドセルを引っぱって最初にあの公園へ連れて行ったのは、Lだったはず。
あの公園に入れる人と入れない人がいる?
だからあの公園は「めったに人のいない公園」なのだろうか。
入れない人は、入ろうとすると記憶を消されて、入ろうとした事を忘れてしまうから。
「アイ」
難しい顔で腕組みしたまま固まっているアイに、僕は声をかけた。
アイは無言のまま、眼だけ上げて僕を見た。
声をかけてみたものの、そんなことを頼んでいいのかどうか、僕は迷った。
事情を全部説明しているとは云え、いや、説明してわかった上で、実験台になれと云うようなものでは。
「なんだよ、らしくねえじゃねえか」
腕組みをしたまま、アイはにやりと笑って
「昨日みてえに、はっきり云えよ。公園に行きてえんだろ」
挑むようにそう云った。
どこまでを覚えているのだろう。そしてどこまでを忘れてしまうのだろう。
僕の家でいっしょに、公園に行く、と話したことさえ忘れてしまうのだろうか。
アイとふたり、自転車で公園の入り口までやってきたものの、僕はまだ迷っていた。
「実はよくある」と、アイは云ってた。
「いや、よくあるは云いすぎか。たまにある、だな。昔から、そういうおかしな記憶のずれみてえなのが、だよ。ずっと、俺がおかしいのかと思ってた。見知らぬ下級生が、俺の顔見て泣き出したり逃げ出したりするんだ。こっちはぜんぜん覚えがねえのにさ。ガタイがでけえから、意味もなくビビらせちまうのかなとか思ってた」
それは、また少し違う話かも?と思ったけれど、何も云わなかった。
そうは云っても、アイも4人の赤ちゃんのひとりなのだ。
LやJに不思議な力があるように、アイにも何らかの力があるのかもしれない。
公園の入り口に自転車を止め、アイはまた腕組みをして仁王立ちしていた。
「よし、おまえの研究のためにひとつ解説してやろう」
横に立つ僕を見下ろして、アイはニッと笑った。
けれど、少し、頬がこわばっていた。
「解説?」
「おうよ。だって、お前は普通に入れるんだろ。じゃあ入れないやつの気持ちはわからねえだろ。だから解説してやる」
ふふん、と鼻息を鳴らしてアイは云う。
入れないやつの気持ち?
考えたこともなかったけれど、何か特別な気持ちが湧くものなのだろうか。
「あのな、入れない、と云うより、何だ、あんまり入りたくない感じ、だな。それは、別に実験に付き合うのが怖えからとかじゃねえぞ。そうじゃなく、例えば昨日もそうだ。おまえに話を聞いてわざわざ帰りにここまで見に来てんだから、せっかくなら入ってみりゃいいだろ?普通は、入ってみるもんじゃねえか?でも、入らなかった。入れなかったって云うより、なんとなく、入りたくねえ感じがした。だから入らなかった。いまも同じ、実験は別にして、なんとなく入りたくねえ感じはしてる」
なるほど、わかりやすい。
僕も、たぶんJもLも、そして祖母も、普通に公園に入れるのは、アイの云う「なんとなく入りたくない感じ」を感じないから、という事になるのだろう。
あの現象を起こす何かの力が、今すでに起動しているのか、常に作動しているものなのか、わからない。
けれど、入る前から、入ろうとする人に、何らかの影響を及ぼしているのかもしれない。
「さて、どうする。一緒に入るか、それとも、俺ひとりで入るほうがいいか」
アイは思案していた。
どちらがいいのだろう。
昨夜の父の様子を思い返してみた。
あの時と同じことが起こるのだとしたら、公園に一歩足を踏み入れる、もしくは踏み入れようとする、その時点で、動きが止まる、はず。そしてその時にはすでに、入ろうとしていた事を忘れている、はず。
「よし、ひとりで行こう。おまえ、ここで見ててくれ」
緊張した顔で、アイはそう云った。
「うん」
僕はうなずいた。どちらにしても、アイから眼を離すつもりはないのだから、僕にはどちらもいっしょだった。
「ふう」
と深く息を吸い込んで、アイは
「行くぞ」
そう云って、公園に足を踏み入れた。
一歩、そこで、動きが止まった。
やっぱり、入れないのか。
記憶は、どうなる?
僕とここへ来たことまで、忘れてしまうのだろうか。
動かない大きな背中に、声をかけようとした、その時、
アイの足が、動いた。
2歩、3歩、公園の中へ入って行く。
4歩、5歩目で、アイはこちらを振り返って、
「なんともねえ」
きょとんとした顔をしていた。
たぶん、僕も同じ顔をしていたと思う。
いつものベンチの前で寝そべっていた黒犬が、何事かと頭をもたげてこちらを見ていた。
けれど、すぐにつまらなそうに大きくひとつあくびをして、伸ばした前足の間に、頭を下ろして眼を閉じた。
実験は、失敗だった。
アイは、そそくさと公園を出てきた。
「なんともねえ、は、嘘だ。やっぱりあんまりあそこにはいたくねえ」
そう、アイは云った。
「なんだろな、なんか、ぞわぞわする」
Tシャツの袖がはち切れそうな、丸太のように太い筋肉質の腕を、アイは両手でさすっている。
悪寒がする、ということなのかな。
試しに、僕も入ってみたけれど、いつもと同じ、あの公園だった。
物置小屋の屋根の上から、いつものカラスが、今日はまた彫像のように微動だにせずに、僕を見下ろしている。
悪寒も、入りたくない感じも、特に何もなかった。
「やっぱり、何かは、ある気がするな。おまえの云う、防御機構みたいなやつ」
僕が公園を出て行くと、なぐさめるようにアイはそう云った。
無意識、という言葉が、頭に浮かんでいた。
さっきのアイは、完全に意識して公園へ入って行った。
無意識ではなかった。
だから、あの「現象」は起きなかった?
バス停で、無意識に、心の声を使った時、手をつないでいなくても、それはJに聞こえていた。
あの海でも、Jが無意識に心で呼んだ「K、おいでよ」という声が、僕には聞こえていた。
無意識に作用する、力?
いや、防御機構なのだとしたら、それではだめだ、弱すぎる。
意識して、悪意を持って近づく者を止めてこそ、役に立つのであって、無意識になんとなく入ろうとした人を止めるだけでは、大して意味がない。
いや、でも、
あの日のアイと仲間の少年は、明らかに悪意、というか敵意、というか挑発的な態度で、僕とJに迫っていた。
けれど、公園には入って来なかった。入れない、ように見えた。
アイにあの日の記憶がない以上、あの時どんな気持ちだったのかを問いただすことはできないのだけれど。
あるいは、「実験」がだめなのだろうか。
「実験」と称した何かは、ことごとく失敗している気がする。
昨夜の父は、結果的に実験台のように何度も何度も同じことをさせてしまったけれど、あれは偶然の結果であって、「実験しよう」と思ってしたことではなかった。
僕はしばらく無言で、考えに沈んでいたらしい。
「おい、だいじょうぶかよ」
声をかけられて顔を上げると、アイが心配そうに僕をのぞきこんでいた。
だいじょうぶだよ、お兄ちゃん、心配かけてごめん。
心の中でそう云って「ふふふ」と笑った。
「なんだよ、おまえ、急に笑うなよ、怖えなあ。ほんとにだいじょうぶか?」
「だいじょうぶ」
ちゃあんと、前に進んでるよ、K
不意に、
Jの声が聞こえた気がして、びっくりした。
「おい、ぜんぜんだいじょうぶじゃねえだろ、何だよその顔、今度はどうした?」
急に笑ったかと思えば驚いて、それはそうだろう。
はたからみれば、挙動不審なおかしな子だ。
「うん、だいじょうぶ。工事現場、行こう」
そうアイに声をかけ、僕は止めてあった自転車のスタンドを蹴り上げた。
ちゃんと、前に進むために、だ。
Jのその言葉、いつ云われたのだったろう、と
工事現場へ向かって自転車をこぎながら考えてみたけれど、思い出せなかった。
放棄された工事現場の塀の周りをぐるりと2周したところで、僕らは、途方に暮れていた。
アイのマウンテンバイクに搭載された距離数メーターによると、工事現場の周囲は約1kmあった。
ほぼ正方形と思っていたのだけれど、より正確には一辺が250mから270mの、ゆがんだ長方形をしているらしい。
ゆがみは、土地の起伏や周辺道路の状況によるものと思われるので、真上から見下ろせば概ね正方形に近い形だとは思う。
結果を云えば、出入口らしきものは何ひとつ見つけられなかった。
1周目は自転車に乗って、2周目はより念入りに徒歩でじっくりと観察しながら回ってみたけれど、2m以上ある高い鉄製の塀は途切れなく連なっていて、作業員が出入りできるような扉も、大型車両が出入りできるゲートとかそれに類するような機能も、何も見当たらなかった。
最初からそうだったのか、工事が中止されてから出入口部分も同じ鉄の塀で塞がれたのか、それはわからない。
そもそも、僕らの想像通り隕石の落下地点なのだとしたら、大型ショッピングセンターの建設工事それ自体がダミーで、周囲を高い塀で囲むことが本来の目的だったのかもしれない。
「だとしても、だぜ」
アイは鼻息を荒くしていた。
「隕石の調査のために出入りしたやつらがいたはずじゃねえか。そいつらはどうやって中に入って、どこから出てきたんだ?」
ニュータウンの建設工事が行われていたのが20年か30年前、だとしたら、あの塀はその頃に作られたと考えるのが自然だ。
隕石が落ちたのは、80年前。
調査がその頃に行われたのなら、当然まだ塀はなく、出入りに不自由はない。
何年かかったのかはわからないけれど、やがて隕石の調査が終わり、調査団が立ち去った。
ニュータウンの建設が始まったのは、今から2~30年前、つまり隕石の落下から50年から60年後のはず。
さすがにその頃には、もう隕石の調査はとっくの昔に終わっていて、何年も何十年も経っていただろう。
調査団はもういないのだから、調査のための出入りの必要はない。
けれど、工事は?
作業員や工事車両の出入りは、当然あったはず。
だったら、周囲を高い塀で囲って、外から中が見えないように、誰も出入りできないようにしたのは、なぜ?
シンプルに考えれば、何か危険なもの、例えば、高濃度の放射性物質?みたいな何かがあって、人が容易に近づけないようにするため、とか、だろうか。
今から2~30年前、隕石の落下から50年から60年後、ニュータウンを建設するために、このミドノ原一帯をどこかのベンチャー企業が買い取った。
建設計画が進む中、土地の一部が、かつての隕石落下地点であったことがわかった。
すでに調査は終わっていたものの、極秘に進められていたため、その内容までは公開されていなかった。
計画では、大型ショッピングセンターを建設するはずだったその土地が、危険な何かに汚染されていることがわかった。
企業は大慌てだろう。
夢のニュータウンのほぼ中心に汚染された広大な土地があったのでは、そんな場所に喜んで住みたがる人はいない。
その危険な事実を隠すため、企業はひとまず周辺を仮囲いの塀で囲んで、誰も立ち入りできないようにした。
そうこうするうちにその企業が倒産してしまい、建設計画も止まってしまった。
「むう、だいぶ荒っぽい推理だけど、そう考えると筋は通るな」
冷えた麦茶を飲み干して、アイはうなった。
さすがにくたびれたし、暑い夏の午後に、何も炎天下で考察を繰り広げることもなかったので、いったん、僕の家のリビングへふたりで引き上げていた。
「汚染はあくまで仮定だけれど。でもきちんと計画して施工された塀ではなくて、あくまで工事用の仮囲いっていうのが、とにかく大慌てで隠しました、って感じがする。汚染でないとしても、中にある何かを安全な状態に処理するまでの間の、暫定的な塀、というつもりだったんじゃないかな」
「その何かをどうにかしてからショッピングセンターにして、分譲地を売り切りたかったんだろうけどな。残念ながらその前に会社自体が倒産しちまったわけだ。その会社の関係者を探すのはどうだ?元社員とか工事の現場監督だったやつとかなら、探せば見つかるかもしれねえ」
我が家のような慣れた動作で、麦茶のポットからグラスにお茶をつぎ足しながら、アイは云う。
確かに見つかるかもしれないけれど、彼らは何も知らないのでは。
実際にあの塀を建てたのはその人たちかもしれないけれど、それだけだ。
中になにがあって、それがどう危険なのか、くらいは知っているかもしれないけれど、そこまでだと思う。
原因不明の眠り病とどんな関係があるのか、それがつながるのは、後から来た企業ではなくて、先にあった隕石の方だろう。
「でもよ、もしかしたら、当時の工事関係者の中に、原因不明の眠り病に倒れる人が続出した、なんて事があったかもしれねえぜ」
アイはそう食い下がったけれど、もしも2~30年ほど前にこの街でそんなことがあったのだとしたら、Lの主治医が話したという「世界でも前例がない」という話と大きく食い違うことになる。
僕がそう話すと、
「そんなこと云ってたのか。あいつがそう云うのなら、そうなんだろうな」
ぼそりともらしたアイの一言が、引っかかった。
「あいつ?」
何かが、ぴこんと記憶とつながる。
あれは、確か、Lのお屋敷の年配のメイドさんの言葉、
「奥様、アンドウ先生がお見えになられました」
Lの部屋でのLのお母さんとの奇妙なお茶会で、なんとも云えない微妙な空気になってしまったあの場を救った彼女の言葉だった。
「Lの主治医も、アイのお父さん?」
つまり、あのお祭りの日、Jの診察をしたあのアンドウ先生だ。
あの時の違和感を思い出した。
アンドウ先生の、妙に芝居がかった態度、あれは、そういうことだったのか。
彼は、すでに半年前からLを診ていた。
だから、救急センターに運び込まれたJを見て、一目でLと同じ症状だと気づいていた。
そしておそらく、その場で患者の名前を確認したのだろう。
ジョウノジーン、ホタルが丘教会の養子だった。
それで、あんな風にとぼけた芝居をしていたのか。
だから、あの場にアイが居合わせたことに、あんなに嫌悪感をあらわにしていたのかもしれない。
次は、自分の息子が眠ってしまうのではないかと、そんな思いが頭をよぎっていたのかも。
アイは、ばつが悪そうに頭をかいていた。
「俺が口を滑らせたこと、内緒にしてくれ。あいつ、患者の事ぺらぺらしゃべるなとか、すげえうるせえんだ。ミカエルの主治医だってことも、ずっと俺にも隠してたくらいで」
それは、別に構わないけれど、でも、と云うことは、
これは、あくまで僕らの想像だけれど、もしもガブリエルがお屋敷で眠っているのだとしたら、彼を診ているのも、アンドウ先生なのでは。
あの、Lのお見舞いの日、アンドウ先生は、ガブリエルの往診のためにお屋敷を訪れていたのかもしれない。
「あ、なんてこった、そうか、ガブリエルも」
アイも、いま気づいたらしい。
「なんだよ、わざわざミカエルを呼び出すまでもねえ、親父に聞いてみりゃよかったって事か。まあ、あの堅物が正直にガブリエルのことを俺に話すとは、ぜんぜん思えねえけど」
それは、そうかもしれない。
あんな芝居がかった演技をしてまで、自身がLの主治医であること、つまり患者とその家族であるミクリヤ家のプライバシーを守ろうとしていたくらいなのだから。
そして何よりそれを自分の息子、アイにも悟らせまいとしていたのではないだろうか。
なんだ、感じの悪いおじさんだなとか思っていたけれど、実は仕事に対してとても真面目で誠実で、しかも息子思いのいいお父さんだっただけ、なのかもしれない。
残念なことにアイ自身は、まったくそれに気づいていないようだけれど。
「なんだあ?またにやにやしやがって。おまえ、今日ちょっとへんじゃねえか?頭使いすぎておかしくなったか?」
「だいじょうぶ」
そう云って、冷たい麦茶を一口飲む。
さて、どうしたものだろう。
手がかりは、変わらずに目の前にあるのに、どうにも手が出せない。
何か、忘れていることはないだろうか。
あるいは、さっき思い出したあのメイドさんの言葉のように、確かに聞いたはずなのに、記憶にはあるはずなのに、見落としている、そんなものが他にもなかっただろうか。
「どうにかして中へ入りてえとこだな。実際にこの眼で見て、なにもねえならなにもねえでいいけど、わからねえままじゃ話にならねえ」
確かに、アイの云う通りだった。
想像や推理なら既存の情報だけでいくらでもできるけれど、実際になにがあるのか・ないのかを知らないままでは、どんなにそれらしい想像も推理も結局なんの意味もない。
高い塀に囲まれて閉ざされた場所、その中に入るには、
「塀を乗り越えるか、塀を壊すか、もしくは、地下にトンネルでも掘るか、かな」
僕がそう云うと、アイは少し意外そうな顔をした。
「ほお、さすがにもう「それはだめ」じゃねえんだな」
僕は首を横に振り、
「手段として何があるか、の話だよ。いいかだめかで云えば、それはだめでしょ、全部」
そう答えると、アイはふてくされたような顔をした。
「まず、乗り越えるのは危険すぎる。もともとが仮囲いなのだから、人が上るような強度で作られてるとは思えない。20年以上経ってるわけだし、腐食してる可能性もある。危ない。次に、地下にトンネルを掘るのは、現実的に無理。道具もお金もない小学生に、そんなことできるはずがない。そして、塀を壊すのは一番だめ。不法侵入に器物破損まで罪が足されることになるよね。子供だから、で許される範囲を越えてしまうと思う。ただし」
説明しながら、考えていて、ひとつ、思いついた可能性があった。
「もしも塀が壊れてたとしたら、そこから侵入するのは、ぎりぎりセーフかもしれない。ボールでも投げ込んで、キャッチボールしてたら手元がくるって塀の中に飛び込んでしまった、塀が壊れてたからそこからボールを取りに入った、ということにでもすれば」
「いいアイディアかもしれねえが、塀が壊れてたとこなんてあったか?ぱっと見、なさそうに見えたけど」
「僕もさっきは気づかなかったけど、扉や入り口を探していたから、目につかなかっただけかもしれない。20年以上も放置されて風雨にさらされた鉄の仮囲いだよ。錆びたりゆるんだりする箇所もあるだろうし、台風もあれば大雨や大風の日だって何度もあったはず」
僕がそう云うと、アイは麦茶を飲み干して、威勢よく立ち上がった。
「よっしゃ、3周目、行こうぜ」
3周目も、自転車は使わずに徒歩で行くことにした。さっきよりももっとじっくりと塀を観察しながら、時には押してみたり叩いてみたりしながら、歩いた。
大通り沿いの、歩道のすぐわきまで塀が迫っている場所はそうでもなかったけれど、歩道から少し離れた塀は、深い雑草に覆われている。逆に云えば、さっきはそこまで分け入って確かめたわけではなかったから、そういう場所こそ重点的に確認した。
時折、通りを車が走り去ることがあったけれど、特に怪しまれはしなかったと思う。
小学生が、道路わきの草むらに入って遊んでいたところで、怪しむ人はいないだろう。虫取りか、探検ごっこでもしているように見えたのでは、と思う。
アイは、どこで見つけてきたのか1mほどの木の棒を手に持っていて、それで雑草をかき分け、塀を遠慮なしに叩いて歩いた。昔ながらのガキ大将といった雰囲気で、なかなか似合ってる。
鉄の塀は、僕らの予想以上にしっかりとした作りで、ゆるみも破れ目も見つけられないまま半周が過ぎ、やがて南側のあの駐車場の辺りまでやってきた。
南側は、駐車場の左右がそれぞれ広い空き地になっていて、その全体が深い雑草のジャングルと化していた。
「こりゃあなかなか、見ごたえがありそうだな」
口ではそう云いながら、アイはこの草むらの探検をそれなりに楽しんでいるように見えた。
背の高い雑草は、深い所では僕の背よりも高い。
中に入ってしまえば、通りからは完全に見えなくなってしまうだろう。
アイは、頭だけ上に出そうだったけれど。
駐車場から5~6mほど西へ、草むらのジャングルを進みながら棒で塀を叩いていたアイが、
「おっ」
と声を上げた。
僕は2~3mほど後ろにいたので、雑草にさえぎられてアイの様子は見えなかった。
こんこん、こんこん、何度も同じ場所の塀を叩いているようだ。確かに、音が今までと違うような。
「おい、ってあれ?キクタ、どこだ?」
背の高い雑草の向こうに、きょろきょろと辺りを見回すアイが見えた。
「ここ、少し後ろ」
声を上げると、
「おう」
そう云ってアイは周辺の雑草を足でかき分けて、スペースを作ってくれた。
「この塀、はずれかけてねえか。音が違うんだ」
こんこん、とアイは棒の先で、1枚の鉄の塀を何度も叩いている。
「うん」
確かに違う。僕がうなずくと、それを承認と受け取ったらしい。
アイは棒の先端を塀の鉄板のつなぎ目にねじ込んで、梃子を利かせて手前にぐいっと引いた。
鉄板がひしゃげるいやな音がした。
「あ、壊してねえぞ。壊れてはずれかけた鉄板を、ちょいと引っ張っただけだぜ」
アイが言い訳をしてる。まあ、そういうことにしよう。
鉄の塀は、内側で太い鉄パイプと固定されていたみたいだったけれど、アイが引っ張った板は、そのパイプとの留め金がはずれていたのだろう。
引っ張られた辺りから外側にぐにゃりとゆがんで、そこに5~60cmほどの隙間ができていた。
人がひとり、どうにか通れそうな隙間が。
いや、アイがひとり、身をかがめれば、どうにか通れそうな隙間、というべきだろうか。
僕なら十分余裕で通れそうな隙間だった。
「ボール、投げ込むか」
アイがこちらに手を出すので、
「持ってない」
と答えた。
「はあ?なんで」
そういう体で、入り込めばいいって話だったのでは。
残念ながら、僕にはキャッチボールとかの趣味はなかったので、そもそも家にボールなんて持ってない。
「そこは用意しようぜ。万が一、見つかった時の言い訳はリアルな方がいいだろ」
へんなところにこだわるんだなと思ったけれど、まあ言い分には一理あるので、
「じゃあ、明日持ってきて」
素直にお兄ちゃんにお願いすることにした。
もうだいぶ、日が西に傾いていた。
今から未知の領域へ侵入するには、時間が足りない気がする。
アイも空を見上げて、
「おう、そうだな。今日はここまでにしとくか」
うなずいてた、けれど。
「なあ、でもちょっとだけ、のぞいてみねえか」
こんこん、とゆがんで口を開けた鉄板を叩きながら、アイは云う。
もちろん、僕も気になってた。
本格的な侵入は明日にするとしても、ここから中をのぞいてみるくらいは、今すぐしてみたい。
うなずくと、アイは少し体を草むらの中へずらして、僕が入れるくらいのスペースを塀のそばに開けてくれた。
アイが広げた塀の隙間のそばへ移動して、中へは入らず、隙間から中をのぞいてみた。
アイも、僕に覆いかぶさるようにして、上から中をのぞき込んだ。
何もない、黒い土の地面が広がっていた。
想像していたような、クレーターだとか大きな穴は、どこにも見当たらなかった。
地面はほぼ平坦だったけれど、少しずつ起伏があるようで、手前から奥へ、ゆるい上り坂になっているみたいだった。
遠くに、2百数十m先の向こう側にある白い鉄の塀の裏側がかすんでみえる。
「なにも」
ないね、と云おうとしたところで、
「しっ」
アイが囁いて身をかがめた。
「おい、あれ、なんだ?」
アイは小声でそう云い、目を細めて、遠くを透かすように見ていた。
ゆるやかな上り坂になった、工事現場のちょうど真ん中あたり、だろうか。
アイが見ている方へ、僕も視線を向けて、目を凝らす。
何かが、立っていた。
黒い、細長い影?
左手から差す西日の中、その黒い影は立っている。
まっすぐに、ではなく、「く」の字の形に曲がった、棒?
標識か、何かの看板だろうか、
と思って見ていると、その「く」の字型の影がまっすぐに伸びた。
動いている。
あれは、まさか、人?
アイがますます身を低くかがめるので、押されて僕も身をかがめる。
その影は、ゆっくりと移動していた。左から、右へ。西から、東へ。
歩いている、人だった。
そして立ち止まり、また、「く」の字に曲がる。
いや、「く」の字というより、さかさまにした「L」の字、だろうか。
身をかがめて、地面を見ている、ような。
何かを探している?
ごくりとアイがつばを飲む音が頭の上から聞こえた。
折れ曲がって何かを探していた人影が、また伸びた。
まっすぐになって、辺りを見渡している、ように見えた。
まさか、こっちを見ている?
アイもそう感じたのだろうか。びくりと身を震わせるのがわかった。
「大きく動くのはまずいかも。アイ、ゆっくり後ろに下がろう」
出来るだけ小さな声で、僕はそう囁いた。
アイがうなずいて、じりじりと後ろに下がっていく。
人影までの距離は、おそらく100mから150mはありそうだった。
声が聞こえるとは思えないし、僕らが顔をのぞかせている塀の隙間の50cmほどの空間が、あちらから見えているとも思えない、けれど。
どうして、あんなところに人がいるんだ?
どこから、どうやって入った?
いったい、何を探していた?
次々に頭に湧き上がる疑問を、ひとまずは、押し隠す。
とにかく今は、ここを離れなければ。
できるだけ早く、できる限り静かに。
ゆっくりと草むらを後退して、あの駐車場から出るまで、僕とアイはなるべく音を立てないよう、注意深く静かに動いた。
そして、駐車場から通りに出るなり、走りだした。
大通りへ出て、信号を渡り、僕の家まで、300m以上の距離を、一気に走った。後ろも振り向かずに。
家へ入るなり、リビングのソファに転がり込み、荒い息を整える。
心臓がばくばく鳴っていたのは、走り続けたせい、ばかりではなかったと思う。
どうにか呼吸が整ったので、キッチンへ行き、冷蔵庫から麦茶のポットを取り出して、さっき洗って伏せておいたグラスをふたつ、流しの横の洗いかごから取ってリビングへ戻った。
麦茶をグラスに注いで渡すと、アイは
「さんきゅ」
短く云って受け取り、一気に飲み干した。
「なにもねえならねえで、それでよかったってのに」
アイは悔しそうに、そうつぶやく。
気持ちは、わからないでもない。
隕石の落下地点を探していたら、そこにはクレーターも穴もなく、誰もいないはずのその場所に、謎の人影がいた。
「あれは、人だよな」
アイが云う。確認するみたいに。
「人だと思う」
僕はうなずく。
人以外の、例えば、迷い込んだ野良犬とか野良ネコには見えなかった。
まっすぐに二本の足で立ち上がっていたし。
「どうやって、入ったんだ、あいつ。入り口はどこにもなかったよな?」
なかった、はず。少なくとも、今日、あの工事現場を3周、いや2周と4分の3周ほどしたけれど、僕らには見つけられなかった。
「でもどこかに入り口はあるんだ、きっと。あるいは僕らと同じように、壊れかけた塀の隙間を見つけて、そこから無理やり入り込んだのかも」
そう、小学生でも思いつくような手だ。他の誰かが同じことをしていても、別に不思議じゃない。
それに、アイが云っていた当時の工事関係者だったとしたら、どこかわかりにくい場所にある入り口を知っていたとしてもおかしくはない。
「あいつ、なにしてたんだ、あそこで」
「何か、前かがみになって地面を見てたように見えた。何かを探してたのかな」
地面、隕石が落ちた穴?
図書館のPCで見た落下地点の画像を思い出した。
確かに、十数センチとかの小さな隕石の場合は、クレーターのような大きな穴ではなく、それなりの小さな深い穴ができるようだった、けれど。
「手元がくるってうっかり塀の中へ投げ込んじまったボール、とかな」
冗談のつもりで云ったのかと思ったけれど、アイは笑っていなかった。
まさか本気で云っているのかと思ったけれど、別の事を考えていたらしい。
「なあ、あいつって、例のヌガノマじゃねえよな」
そんなことを、アイは口にした。真剣な顔で。
「例の、なに?」
「ヌガノマ。知らねえか?小学生の間で流行ってる、怪談っていうか、都市伝説?みてえな」
「知らない」
聞いたことがなかった。
もっとも、僕は小学生なのに小学生の話題には疎いので、知らないのも当然かもしれない。
「旧日本軍の脱走兵で、片目、片腕、片足の軍服を着た痩せた男、らしい。片足なのにものすごい速さで走って子供を攫っていくとか、「ヌガノマ」って呼ぶとどこまでも追いかけてくるとか、まあ、そういう話」
云ってるうちに怖くなってきたのだろうか、アイは、もごもごと口ごもってしまった。
案外、気が小さいのかな。ガタイはでかいくせに。
「旧日本軍の脱走兵なら、もう相当なおじいさんでは」
100歳とか、それ以上のはず。まあ、怪談にまじめにつっこんだりすると、またJに笑われそうだけれど。
アイが黙り込んでしまったので、
「確かに少し不気味な感じはしたけど、そういうのではないと思う。アイがさっき云ってた、当時の工事関係者じゃないかと、僕は思ったけど。それなら、どこかに入り口があるのを知ってても不思議じゃないし、何かを探しているように見えたのも、不自然ではないよね」
できるだけ自然に、そう云った。
それに、アイが怖がっているのは、怪談を思い出したせいばかりではないのかもしれない。
あの公園に入った時、アイは「なんともねえ、は、嘘だ。あんまりいたくねえ」「なんだかぞわぞわする」と云ってた。
あの公園と同じように、ミドノ原、つまり隕石の落下地点にも同じ「力」が働いているのだとしたら、不用意にのぞきこんだアイが得体のしれない恐怖を感じたとしても、おかしくはない、かもしれない。
「そうか、そうかもな」
自分に言い聞かせるみたいに、アイはそう云ってた。
これはもしかすると、明日からは僕ひとりで、あの場所の探索をすることになるのかもしれないな、となんとなく思った。
少し寂しい気もするけれど、もともと、ひとりで調べるつもりだったのだ。
ここまで協力してくれただけでも、十分助かったよ、お兄ちゃん。
下を向いて何か考え込んでしまったアイに、心の中で、僕はそう声をかけていた。
the emperor’s new clothes iv
屋根裏ネコのゆううつ